講師の中村です。
コードのジャカジャカ弾き (ストラミング)に少し慣れてくると、次に挑戦したくなるのが指で1本ずつ弦を弾くアルペジオですよね。バラード曲などでポロ〜ンと綺麗な音色を響かせられたら気分はもう上級者です。ところが、多くの方がここでもちょっとした壁にぶつかります。
「音がプツプツ途切れて繋がらない……」
「隣の弦に指が当たって『ペチッ』と変な音が鳴る……」
「音が濁って綺麗に響かない……」
これまで記事で何度か「コードは多少雑でも文脈さえ合っていれば問題ない」という趣旨のことをお伝えしてまいりましたが、アルペジオに取り組み始めたならばこの誤魔化しのロジックからは卒業しなければいけません。今回は、アルペジオの音が劇的に美しくなるフォームの法則を解説します!
目次
アルペジオが「プツプツ」途切れる、濁る3つのNG例と改善点
まず、音が綺麗に繋がらない・濁ってしまう人に共通する「3つのNG原因」から確認しましょう。
①フォームが悪く、指の腹で押さえている
初心者によくあるのが、「指の腹」いわゆる指腹 (しふく)で押さえるパターンです。コードが鳴らないからといって力でなんとかしようとすると、上の画像のように指が反ってしまします。その結果、指腹が弦にベターッとくっついてしまい、そのせいで押さえが甘くなって音が出なかったり、必要のない弦にまで触れてしまうことになるのです。
左肩を少し落とし、肘を下げて脇を締めて、指の第一関節をしっかり曲げながら押弦し、爪のすぐ下 (キワの部分)をピンポイントで垂直に押さえるイメージを持てば改善されます。
文字で説明しきるのは難しいですが、この基本動作をマスターすると、アルペジオ特有の「バラバラの音が重なり合う感じ」が表現できます。
②ギターのコンディションが悪い
ギターの弦高が高くなってしまうと、いくらフォームが正しかろうが力を入れようが、正しく音が鳴ってくれません。ギターという楽器は非常に繊細で (特にアコースティック・ギターとクラシックギター)、ちょっとした気温や湿度の変化で至る所のコンディションが変わってしまいます。特にネックの反りは日常的に起こりうるため「昨日まで大丈夫だったのに…!」という気持ちになることもしばしば。若い楽器 (作られてから年月が浅い楽器)ほど、外気の影響を受けやすくなっておりますので、一度チェックしてみましょう。
アコギなら12フレット (ドットが2つついているところ)で弦高が2.5mm (6弦)~2.0mm (1弦)、エレキギターなら2.0mm (6弦)~1.5mm (1弦)くらいがだいたい正常だと言われています。スケール (ものさし)を使って測ってみてください。これを0.1mmでも超えると弾きにくくなるはずです。
③コードチェンジに時間がかかりすぎている
アルペジオをキレイに鳴らすには、コードチェンジを素早く行う必要があります。
以前こちらの記事で、「チート・ピッキング」というのを紹介しました。これは右手のピッキングを止めずに、コードチェンジを少し早めに行うことで、次のコードに間に合わせるという弾き方です。
ストラミング (ストローク)で弾いている分にはこれは有効なのですが、アルペジオとなると1音1音の明瞭性が大事なので、チートは一切使えません。コードチェンジに自信がない場合はアルペジオの習得を通してコードチェンジの速度を上げていけばよいです。
右手の弾き方やフォームもポイント
アルペジオをキレイに鳴らすには、左手の精度もそうですが、右手の弾き方にもコツがあります。以下にポイントを書いていきます。
①手の角度
フィンガーピッキングのフォームを見直すために、一度鏡の前で (あるいはカメラの前で)、前腕から手にかけてどのような構えになっているか見てみましょう。
ここに2つの画像がありますが、右手のフォームに関しては下側の画像のように手首を少し曲げて角度をつけるのがベターです。必ずこうしなさい、というほどの基準ではありませんが、もし上側の画像のように前腕から手にかけてストレートになっている場合は指と弦が触れている時間が長くなるため、①「シャリッ」というピッキング・ノイズが出やすい、②音量が小さいというデメリットが生じます。
下側のように手首を少しだけクイッと曲げて角度をつけると、弦に対してピッキングする指がほぼ垂直に入るため、弦振動をコントロールしやすく、小さい音から大きな音まで鳴らせます。また、6弦を叩きながら演奏する場合にも、下側のフォームの方が動きやすい利点があります。
もちろん、だからと言って左の手つきが全く悪いというワケではありません。例えばギャロッピング奏法などでミュートしながら演奏する場合は必然的に上側のような前腕から手がストレートに伸びるフォームになります。大事なのは使い分け。
②爪の有無
爪があった方がキレイに音が出せますが、ギターを弾いていると爪は消耗されてしまうので、きちんとやすりで形や表面を整えて演奏するのをオススメします。整え方に関しては過去に記事を出しているのでそちらを参照してください。
また医療系や飲食店など職業柄、爪を伸ばせない方もいると思います。その場合は指先での演奏はやむを得ません。必要ならフィンガー・ピックという商品もあるのでご活用ください。
指先での演奏時にもう1つ注意したいのは、音量が思うように出にくいために力一杯弦を弾 (はじ)くことで、「スラップ」になってしまう点。スラップは弦を引っ張っるように弾く奏法で、パチンという強い音が出ます。これは確かに強く出力できますが、サスティーン (余韻)が残らないためアルペジオの良さが出ず、アクセントとして使う程度にとどめておかないと、曲によっては雰囲気を壊してしまいかねません。スラップになってしまわない力加減で、ギターの音量を最大限出してあげることがポイントです。
③小指のアンカリングはNG
この画像のように、小指をボディにつけたまま演奏する人はプロでも結構います (アンカリング)。「プロもやってるならいいじゃん」という見方も一部ではあるかと思います。僕もそれは理解しているつもりですが、僕のレッスンでは原則としてこの弾き方はNGとしています。
そもそもこのフォームには狙った弦に当てやすいというメリットはあるものの、
- 絶えず余計な力が入ることで手が常に緊張状態になると、関節や筋肉の慢性的な痛み、炎症につながりやすくなる
- 速い動きに対応できない (また一からフォームを見直さないといけない→二度手間、時間の無駄)
- 各指のコントロールにバラつきが出てしまい、強弱の弾き分けができず演奏が素人臭くなる
まぁ要するに、演奏が上手くならない上に中長期的には体にもよくないのです。
しかし、実際には小指をつけること自体がダメということでもなく、「ボディに軽く触れている」程度の状態であればアンカリングはそれほど悪ではありません。フィンガースタイルの名手として名高い押尾 コータローは小指を立てたまま演奏することが多く、ボディに小指を置いているシーンをよく見かけますが、実際には軽く触れている程度で固定されていません。また、ネイル・アタックという奏法を繰り出す際に小指をピックガード上に着地させることでクッションの役割となって力加減をするのに役に立ちます。
余談: アルペジオとソロギターの違い
多くの方が勘違いされているのですが、アルペジオとソロギターの違いをイマイチ区別されていません。この手の記事やYouTubeの解説でもこの2つを混同しているのを時折見かけますが、簡単に違いを説明すると、アルペジオは伴奏のためのもので、ソロギター (フィンガースタイル)は伴奏+メロディや打楽器まで表現したモノです。
アルペジオは日本語に訳すと「分散和音」。つまりコードの構成音を1つ1つ鳴らしていくのが本質です。そのため、アルペジオをしている時は弦を押さえている指 (左手)が動くことは滅多にありません。また指で演奏されるものという認識が強いですが、アルペジオはピックでも可能です。あくまでもメインとなる歌や楽器を支える”伴奏方法の一種”で、アルペジオ自体がメインになることはありません (イントロとかではあり得るけど)。
一方でソロギターは、これ自体がメインになります。1人でコード、メロディ、ベース音、パーカッションなどの複数の楽器を同時に演奏する”演奏形態の一種”です。少人数編成 (1-2名)で演奏されることがほとんどで、ここに歌や他のメイン楽器が入ってくることはほとんどありません。
難易度で言うとソロギターの方が遥かに難しいですが、そもそもこの2つは”伴奏”か”主役”かという点で目的が異なりますので、用語の使い方には少し注意しましょう。
「自分の爪の長さや形でも綺麗に鳴るのかな?」
「右手の指がどうしても狙った弦と違う弦を弾いてしまう……」
という方は、ぜひ当教室の体験レッスンへ。アルペジオの音色は、指先のほんの1ミリの角度や力加減で変わります。
独学で変なクセがついてしまう前に、僕があなたの指の形や手首の角度に合わせた「最も楽に綺麗に響くピッキング」を目の前でレクチャーします。流れるような美しいコードの響きを、間近で観ていただくだけでも少し変わると思います。
Midville’s
中村


