
[テキストレッスン] スケールに手を出す前に…
講師の中村です。
自分のスキルが一定のところまで来ると、「出来た!」という実感を得る機会が減ってしまいます。
譜面やコードはある程度読めるけど…自分が何を弾いているか分からない、もっと”音楽的なこと”を突き詰めたい。そんな方に少しでもヒントになればと思い、この記事を書いています。
指板の音はできるだけ覚えておく
これは言ってもなっかなか皆さんやらないのですが、コード・ダイヤグラムやTAB譜のおかげで、ギターを弾く人はドレミが全然分かってないという異常な状態が続いたままになっているケースが多いです。これはギターの良いところでもあり、悪いところでもあります。
どのフレットに何の音があるかを知っておくだけで、この先必要になる (であろう)専門的なことが分かるようになりますので、知っておいて全く損はないのです。
下記は僕がレッスンで使っている「指板早見表」という図です。ネットでググれば出てくる指板図となんら変わりありませんが (多分僕のよりもっと見やすいものがたくさんあると思います)、今回はこれを使います。※受講生で持っていない方は言ってくれればあげます。

赤文字は開放弦、黒文字はピアノで言う白鍵、青文字はシャープ/フラット付きの音で、ピアノで言うところの黒鍵です。
面倒に思うかもしれませんが、ドレミでもアルファベットでもいいのでこの指板の並びをなんとか覚えてほしいなと思います。話はそれからです。
日頃コード弾きが多い方は、5弦と6弦の音名はマストで暗記してほしいです。この2本はコードやスケールにおいてルート音 (基調)になりやすい弦なので、この先コード理論やスケールを学ぶ際にこれらが分かっていればスーッと頭に入ってくるでしょう。
「暗記は苦手」だという方は次の覚え方を参考にしてください。
基準のフレットを作る
基準のフレットを作ると良いです。コードにおけるルート音は、コード名と一致していますので、ルート音の音名を覚えるつもりで取りかかれば優しいと思います。例えばFコードのルート音はF (ファ)、Gコードのルート音はG (ソ)、Cコードのルート音はC (ド)といった具合です。それらの覚えやすいフレットを基準にしましょう。

所詮、音は規則的かつ連続的に配列されているにすぎません。しかも1フレットにつき1つずつ音が上がっていくという分かりやすいシステムになっています。そして順番は常にド→ド#→レ→レ#→ミ →ファ→ファ#→ソ→ソ#→ラ→ラ#→シとなっており、1周したらまたドに戻る。モノポリーのように何周も何周もしているのです。
ギターでは弦1本につき20〜24フレットくらいなので1周半〜2周したら終わりですし、正味アコースティックギターなら12フレット以降はあんまり使いませんので実質1周覚えていればOKです。

基準のフレットを作れ、そこから数えれば少しは手間が省けるでしょう。僕はまず7フレットまでの白鍵の位置 (↑の図の黒い字)を覚えまくりました。
レッスンでは1音ずつ音名を記入したカード (12枚)を準備して、そのカードの束から1枚無作為にドローし、書かれてある音を1弦から6弦まで順に弾くという訓練をします。これならゲーム感覚でできるので楽しくできますね。
スケールに手を出す前に…
多くの人が、なぜか「スケールを覚えよう!」と閃いて手を出しますが (僕もそうでした)、残念ながら結局挫折してしまうパターンがほとんどのようにお見受けします。なぜか?
丸暗記するにはスケール自体の種類はあまりにも多いし、1つの音階につきたくさんの音を含んでいるため、ちょっと膨大に感じますよね。しかもスケールの中には、その場に相応しくない音 (=テンション・ノート)がいくつか含まれていて、その相応しくない音をどう使うかを理解しないまま弾いても「上達した」と実感することができません。
なので、スケールに手を出す前に”その場に相応しい音 (=コード・トーン)”を知ってほしいと思います。

この図は指板上のセブンスのコードを構成するコード・トーンを表した図で、5弦スタートと6弦スタートの2パターンあります。※◯の中の文字は、左手の指の指示です。
まずは何も考えずに、これをスラスラと弾いてセブンス・コードの構成音がどこにあるか体に覚えさせてください (セブンスができるようになったら、メジャー・セブンス、マイナー・セブンスも覚える!)。フレット番号の指示はありませんので、どこで練習してもかまいませんが、レッスンでは5フレットや7フレットを使うことが多いです。慣れたら全てのポジションで弾けるように練習します。このフォームをそのまま並行移動すればいいだけです。(ギターッてこーゆうのは覚えやすいですよね。)
闇雲にスケールを覚える前に場にふさわしい音 (コード・トーン)からマスターしていくのが順当であると僕は考えています。なぜなら、コード・トーン (場に相応しい音)は、スケールからテンション・ノート (場に相応しくない音)を取り除いたものだからです。
コードを構成する度数について

この図は先ほどの図と同じですが、コードを構成する“度数”で表しています (◯の中に度数が記入されています)。「度」というのは基準となる音から次の音までのインターバルを表す単位で、度数で2音間の関係性が分かります。僕は勝手にこのチャートを度数マップと呼んでレッスンで使用しています。
セブンス・コードにおける構成音は、R (ルート音)から順に、M3 (メジャー・サード)、P5 (パーフェクト・フィフス)、m7 (マイナー・セブンス)の4つになります。

試しにC7のコードを例にとってみましょう。C7の構成音はド、ミ、ソ、シ♭の4つです。これらはどのような響きを持っているのか。ドの音から見て、ミはM3 (メジャー・サード)といって明るい音になっています。ソはP5 (パーフェクト・フィフス)といって安定感のある音で相性抜群。シ♭はm7 (マイナー・セブンス)といってドにとってはやや不協和ですがM3やP5がいると独特の調和をしてくれます。
どのコードにも基本的にRとP5は含まれていて、サードとセブンスがメジャーかマイナーかでコード・ネームが変わっていきます。例えばサードとセブンスがどちらもマイナーだったらマイナー・セブンス・コードになるし、サードとセブンスがどちらもメジャーだったらメジャー・セブンス・コードになります。

【覚えること】
①ルート音を基準にして何度がどこにあるのかということを手で覚えて、②その度数が持つ響きの特徴を耳で覚える。この2つをコード・トーンを通じて取得してください。
これが役に立つと言える根拠は、これが「繰り返し使える知識である」からです。繰り返し使える知識を知ることが、学びの本質です。
練習のすすめ
指板の音を覚える時も、度数を覚える時も、練習の時には「ルート、メジャー・サード、パーフェクト・フィフス、マイナー・セブンス、ルート~…」などと音の名前や構成度数を呟きながらやるといいです。これが早く覚えられると思います。※ライブで呟くクセをつけないように。
別に嬉しくないおまけ資料

今日は、スケールに手を出してしまう人の洗脳を解くための回なので、コード・トーンの話が中心で”テンション“については触れませんでしたが、もし知りたいぞ、という方のために、資料だけロンチしておきます。
また細かいことは別の記事で書こうと思います。
動画レッスン出さないんですか?とよく言われるんですが、すでにいいレッスン動画がたくさんありますので、わざわざ僕が同じ内容のものを出す必要もないかな…と。ちょっと難しい内容だったかもしれませんが、おさらいも忘れずに。指板を覚えて、コード・トーンを弾く。お疲れ様でした。
Midville’s
中村
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中村
音楽講師 / ビートメイカー
『井上 陽水英訳詞集』 著: Robert Campbell <講談社>
内容は日本語を母語にしている僕たちでさえも「不思議!」と思わざるを
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