
シールド・ケーブルよもやま話 2/2
講師の中村です。
今回はオススメのケーブル (シールド)についてのよもやま話、その2。ちょっとマニアックな話になります。ケーブルの内蔵について触れるので。
かつての僕は、「こんなゴム紐でホントに音が変わるんか?変わったとしても自己満足やろ…。」と思ったものです。それはただ”良いもの”を知らないが故の偏見でしかありませんでした。
結局ケーブルによって何が違うのか?
やっぱり高くなればその分音が良くなります。
良い音の定義は難しいですが、例えば安いケーブルには”音の厚み (パワー)”がなかったり、弾いた時の”手応え (アタック感)”も少ないです。きちんと音にこだわって作られたものなら”低音がクリア”だとか、”高音の抜け方がキレイ”だとか、好みの音質のものが見つかりやすいんですよね。他にも”ノイズに強い”ケーブルもあります…まぁ、どこを基準に据えるかは人によってさまざまなんですけども。ある人は”ケーブルの見た目”が大事だという場合もあるでしょう。
貧乏性な僕は”耐久性”にうるさい部分があります。もちろん音も大事なんですけど、音と同じくらい”耐久性”を気にします。
ケーブルにはエレキ用、アコギ用があるワケではありませんので、原則として好きなのを使ってよいです。結局のところ、適材適所なのだということです。
あ、ケーブルを選ぶときは必ず”モノラルフォン”を選んでくださいね。モノラルは絶縁リングが1本になっています。(※”one stripe”のところ) これが2本になるとステレオケーブルになってしまいます。

ケーブルの違いでどれくらい音が変わるかと言えば、比較して初めて違いがわかるものであって、ケーブルのおかげでHondaのカブがHarley-Davidsonに化けるなんてことはありません。そのバイクに装備されているマフラーやグリップを交換して、走りやすさや見た目の良さをちょっぴり良くする、ぐらいの感覚だと思ってもらえれば。
ただケーブルは試し弾きがなかなかできません。合わなかったからやっぱり返しますなんてことができれば良いのですけど、難しい。そこで、どのように選ぶか、見た目で分かる違いだけでもご紹介できればと思います。
プラグの形を見よ

ケーブルの先端についているプラグの形状には、ストレート (S)と、L字型 (L)の2種類あります。そのため、SS (両方ストレート)とLS (片方ずつ)とLL (両方L字)の3種類があります。
アンプに繋ぐ方をSにして、ギターに繋ぐ方をLにしておくのがおそらく一般的ですが、下の写真の右側のように、ボディーの正面にジャックがある場合はSSを使ってる方が多いかも。

またエフェクター同士を繋ぐパッチケーブルは主にLLです。

プラグから分かること

プラグの色も2種類あり、シルバーとゴールドがあります。それによって少し特性が異なります。
【シルバー】湿気や埃に弱く、使わない時間が長くなると燻んでしまって接触不良を起こしやすくなります。同じシルバーでもメッキの種類がいくつかあり、最もポピュラーなのはニッケルメッキです。酸化して劣化に弱いことを除けば、コスト面でもサウンド面でも平均的な仕様です。
【ゴールドメッキ】腐食には強いです。ただし少し高級な上、導電性の点は少し劣ります。見た目は上品で良いものの、挿しちゃったら見えないし…。

シルバーにしてもゴールドにしても、プラグのスリーブ部分が鏡面仕上げがされているキレイなものを選ぶといいです。安物のプラグは気泡みたいな粒が付着していることがあり、ここから湿気や埃が侵入して結果的に接触が悪くなるなど、不具合が起きやすくなります。
それから、安価なプラグについている絶縁リング (先端のくびれのすぐそばにあるライン)がプラグのスリーブ部分よりもはみ出していることが稀にあります。これも良くありません。
長さは気にするべき?
ネット上には色々な意見がありますが、結論から言うと普段使い用の5mや7m程度のシールドであればあまり気にしなくて良いと思います。ただしアンプとギターの間にエフェクターなど色々な機材を挟む場合を除きます。
ケーブル自体が長いとレイテンシ (遅延)が出て、弾いてる音とアンプから出る音にタイムラグがあると感じることがあります (僕はない)。電気信号の速さは、光の速さとほぼ同じ。ケーブルが長くてもタイムラグを気にしないといけない場面はそうそうないような気がします。
ただ、長いケーブルには別の問題があります。それはノイズです。ケーブルの中は抵抗が高く (ハイインピーダンス)、ノイズを受けやすい性質となっています。なので、ケーブルが長くなることで本来不要なノイズが乗ってしまったり、さらにエフェクターを挟むことでより多くの抵抗を受け続けた結果、音質が劣化しやすくなるのです。
ケーブルの外皮 (シース)の硬さを確認しよう
ケーブルの外皮 (シース)にも色々な素材があります。主に樹脂系なんですけどね。
硬いものは断線に強くなりますが、取り回しが非常に悪いです。柔らかいと使いやすいですが、傷みやすい。多くのケーブルではポリ塩化ビニールという化合物を使っており、この素材がおそらく最も”ちょうど良い”と思われます。ただその中にも固さは色々。手で触ってみたり、軽ーく曲げてみたりして使いやすさをみてみると良いです。エフェクター同士を繋ぐパッチケーブルは摩耗する場面が少ないので柔らかい素材でも良いと思います。
僕はNEOが出しているForce ’77Gというケーブルを使っていましたが、シースの表面がギザギザになっており地面や他のケーブルとの接地面が減るような作りになっています。外部からのノイズに強いメリットはあったんですが、特定の方向に曲げにくい素材でもありました。

結局ハンダが全て
見えない部分なので言うてもしゃーないんですが、中のハンダ付けの技術や、ハンダそのものの質が良くないと良いケーブルにはならない気がします。身も蓋もありませんが…。

実はある時期まで自作ケーブルを使っていました。その時に痛感したことです。どんなに素材が良くてもシェフが悪ければ美味しくならないのと同じだな、と。
僕が自作していた頃は鉛フリーのちょっと高いハンダを使っていました。最初の頃は慣れない作業でイモハンダになりやすかったのですが、何本も作っていましたから、徐々に上の写真のように富士山型に仕上げられるようになっていきました。初期の頃に作ったケーブルとは違って音質がグッと上がりました。ハンダッてこんなに変わるんだと、目から鱗でしたね。
注意!ケーブルでは音を”良く”できない
ケーブルで音が変わると散々言ってきましたが、厳密には音を”足し算”して良くすることは無理らしいです。
例えば、低音がよく出るケーブルがあったとして、それは低音をたくさん出すように足し算しているのではなく、中音〜高音を削ることで低音を目立つように”引き算”して微調整しているのだそうです。この微調整をしすぎると音の厚みは減ってしまうし、何もしなければ音質はモワモワッとしてしまいます。
どちらを取るのが自分にとって都合が良いか、そこが良いケーブルに出会うポイントだと思うのです。
何かの参考になれば幸いです。
全ての技術者に敬意を込めて。
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中村
音楽講師 / ビートメイカー
“Finger Pickers Took Over The World” (Chet Atkins with Tommy Emmanuel)
ある師弟ギタリストのコラボ作品