
シールド・ケーブルよもやま話 1/2
講師の中村です。
今回はケーブル (シールド)についてのよもやま話。
このアイテムをきちんと選んで使う人は生徒さんには少ないですが、同業者同士だと「何使ってる?」などとトークの軽いネタになったりします。今回は個人的なオススメのケーブルをいくつか紹介します。
EX-PRO (イーエックス・プロ) / Sound Wood (サウンド・ウッド)

EX-PROは周辺機材を手掛けている会社です。ケーブルだけでもいくつか種類がありますが、このSound Woodはアコギ、ガットギター、ホローボディ系のエレキギターとの相性がめちゃくちゃ良い。低音〜中音がクリアで、音量もしっかりあります。アコースティック楽器特有の音の暖かさの再現度が結構エゲツないので、インスト系の人にはオススメしたいケーブルです。僕は試してませんが傾向的にはアコベ (アコースティック・ベース: 下の写真)も合うと思います。

このケーブルは「プラグキャップで音質が決まる!」という前提に立っていて、”カリンの木”で手作りしたプラグキャップを使用しています。7mの長さで1万円くらいする比較的高級なアイテムだし、プラグキャップが外れやすい (しかも乾燥すると割れたりもする)などのデメリットはありますが、音だけで言えば市販されている量産品の類ではダントツで良いです。
実際にプラグキャップでそんなに音が変わるかどうかは僕は分かりませんが、Sound Woodは初めてケーブルによる音の違いで感動したアイテムであったことは間違いありません。以前はライブ用のケーブルとして使っていましたが、断線してしまってからまだ再購入できてません。
CANARE (カナレ) / Gシリーズ

こんなものは僕なんかがわざわざオススメしなくても、スタンダード中のスタンダードですから…と思いながらも、やっぱりCANAREは素晴らしい。
この音を耳に覚えさせて、使っている中でこのケーブルよりも良いモノが欲しくなるかどうかを検討すれば良いです。少し輪郭のぼやけた感じは否めませんが、電気楽器の大敵であるノイズは少なめ。そんな可もなく不可もないこのケーブル、価格は安くて、どこでも買える、最も庶民的で平均的なモデルだと言えます。そしてカラーバリエーションも豊富なので選ぶのもちょっと楽しかったり。Gシリーズはエレキもアコギも関係なく使えます。
価格は5mで¥2,000程度だったかと思います。プロユースのものは5mで1万円くらいするので、それからするとかなりリーズナブルですね。もちろん、市場にはもっと安いものもたくさんありますが、その多くはCANAREと比べると品質が結構落ちるので「この品質なら2,000円は安い」と考えざるを得ないのです。
個人的にCANAREの好きな点は耐久性の高さ。これは明らかに値段とつりあってません (良い意味で)。8万回の屈曲テストをしても、中の素材が傷むことはなかったそうです。普通なら断線してしまうでしょうね。
しかもプラグもしっかりしていて、作りも良い。余談ですが日本国内の音楽スタジオやライブハウスで使われている配線のほとんどがCANAREだとのことです。彼らには他にない”信頼”という価値があるんじゃないでしょうか。
僕はストリートライブをする時は今でも大体CANAREです。
LIVE LINE (ライブ・ライン) / Pure Craft (ピュア・クラフト)

「音にはある程度こだわりたい…でもお金はかけたくない」という方には迷わずPure Craftを薦めています。LIVE LINEは大阪の企業、株式会社TMCが手掛けるブランドで、ストラップやケーブルなどステージに立つ人にとって重要な周辺機器をプロダクトしています。より遊び心に満ちたデザインが特徴で、品質もそれなりに高いのにプライスレンジが広くプロ/アマ関係なく手を出しやすいようになっています。
Pure Craftの好きなところは、まず見た目!深緑のシース (外皮)に、わざと燻んだような加工がされているプラグキャップ。こーゆうアンティークなルックスが好きな人には結構ささると思います。これは間違いなくステージ映えしますよね。
そして肝心の音については中音域の不要な成分がスッキリと削ぎ落とされ、低音から高音までバランスの良い音色になっています。とりあえず繋げばそれなりに良い音が出せる、そんなケーブルです。アコギやエレキギターとの相性はかなり良いと思いますが、ガットギターはちょっと選ぶかもしれません。個人的にナイロン弦のギターは中音域欲しいので…。
ただCANAREと違ってそんなに強くはないです (いや、CANAREが強すぎる…?)。僕はこの10年でPure Craftを3本以上ダメにしてしまいました。
KAMINARI (神鳴) / 各種

KAMINARIは元々アコースティック用のケーブルがプロの間でスタンダード化して一躍有名になりましたが、今はエレキギター用、ベース用にチューニングされた各種ケーブルも市民権を得ており、どちらかというとプロユースなイメージですが、音よし、耐久性よしでライブ現場でもレコーディングでも文句なしに使えるシロモノです。特に弾き語りやバンド系の人との相性が良いかと。基本どんなギターにも適応してくれる懐の深さがあり、中でもGibson (ギブソン)のようなパワー系の楽器とあわせて使えば鬼に金棒ッてなイメージです。
ただ、1本で何でもいけるという万能タイプではありません。アコギに繋ぐならアコギ用が良いし、エレキに繋ぐならエレキ用が良いし…値段も安くはないのでたくさん買うことを考えるとコスパはあまりよくありませんが、モノは良いです。
まぁ、弾き語り系でもバンドマンでもない僕はKAMINARIを所有したことはないのですけど…。
NEO (ネオ)/ Force ’77G

個人的には一番好きなケーブルです。僕の機材周りはほとんどがこのForce ‘77です (但しプラグだけはリプレイスした自作ケーブル)。NEOは秋葉原で半世紀近く商売をしてきた小柳出電気商会 (OYAIDEとして知られてる)が持っているケーブルに特化したブランド。
まずアコギもエレキも関係ありません。EX-PROやKAMINARIと比べると音の厚みの部分では劣るかもしれませんが、ピックアップからの電気信号にただただ素直に反応してくれる優秀なケーブルなので、全体的にスッキリしたサウンドになります。ギラついた高音もなく、モワモワした低音もなく…。

そしてノイズに強いです。シース (外皮)の表面がギザギザしていてケーブルが物と触れる時に (例えば床や他のケーブル)、接地面が少なくなることで外来ノイズが入りにくい設計になっているんです。特定の方向に曲げづらいという取り回しの悪さは多少感じましたが、ライブでもレコーディングでも使える万能タイプだと思います。それでいてウンと高級でもないので、良い楽器をお持ちの方にはオススメです。
強いて言うなら激しめの音楽をする人には合わないかな。
BELDEN (ベルデン) / 8412 The Wired (ザ・ワイヤード) & 9778 The 60’s (ザ・シックスティーズ)

上に紹介した5つとも日本の製品ですがBELDENはアメリカの会社で、ケーブル業界ではCANAREと双璧をなすスタンダードなメーカーとして知られています。個人的にはアコースティック楽器やベースには8412 The Wired、エレキギターには9778 The 60’s を使うと良いのでは…という棲み分けです。
8412 The Wiredは音の太さ、9778 The 60’sは音のタイトさやパンチ力が評価されていますが、どちらも音の輪郭がハッキリとしていて好きです。8412 The Wiredはとにかく音に厚みがあるので弾いてるとちょっと上手くなったような気持ちになるんですよね。ややモダンな音というか、ちょっと都会的な音色に感じます。それに対して9778 The 60’sはオーセンチックな (文字通り昔風な)音に感じます。音が深いというよりも、あえてチープなところが良い…みたいな。価格はどちらも高すぎず、安すぎず…¥5,000くらいだったかと思います (9778 The 60’sの方が少しだけ安い)。余談ですが僕が初めて使ったケーブルは9778 The 60’s でした。スピーカーケーブルは今でもBELDEを使っています。”ウミヘビ”の愛称でお馴染みの9497 (下の画像)。

BELDENのギターケーブルのデメリットを1つ挙げるならば、販売されているパッケージの中でケーブルが捻れたりして変なクセが付いている点です。こーゆうのはいずれ断線の元になってしまいます。
ケーブルも奥が深い
ただの音を出す線かと思えば、変えた瞬間に音が生き返ったり、ノイズが消えたり、違いが結構あるんです。僕も以前はこんなものにお金をかける必要はないと思っていましたが、やっぱり良いものを知っていくと物事は玄妙だなと感じます。次回はもうちょっとオタクな記事を書こうと思います。
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中村
音楽講師 / ビートメイカー
『井上 陽水英訳詞集』 著: Robert Campbell <講談社>
ただ翻訳をしただけでなく、なぜそう訳したのかをあまり難しい言葉を使