
ナット幅の狭さと”弾きやすさ”は関係ない
講師の中村です。
今回はタイトルの内容が全てなんですが、じゃぁ弾きやすさはどこで判断すれば良いのか?というところまで書いていきたいと思います。
細いネックのギターが必ずしも弾きやすいとは限りません。ですが楽器店に勤務していた頃、ナット幅の狭い楽器にこだわる方を多くお見受けしました。彼らの呪縛を解き、本当に弾きやすいギターとは何かを理解してもらうことは容易ではありませんでしたが、もし数字の呪縛に囚われている方がいらっしゃいましたら、この記事を読んで選択肢を広げてみてください。
ナット幅と弾きやすさは関係がない

一般的にアコースティックギターのナット幅 (上駒幅)は44mm程度が平均です。各メーカーごとのおおよその規格は下記のとおりです。
YAMAHA: 44mm
Morris: 43-45mm
Gibson: 43.8mm
Taylor: 44.5mm
Martin: 42.9-44.5mm
Takamine: 42mm
K.Yairi: 42mm
Ibanez: 44-45mm
Ovation: 42.8mm
Cole Clark: 44mm
Maton: 44.1mm
Larrivee: 44.5mm
Furch: 45mm
(※海外勢の数字が中途半端なのは単位をインチ基準にしてるからです。)
ギター選びをする時、スペック表に記載されているナット幅の数字を見て「44mmじゃ大きいな、弾けないな…。」と判断するのは尚早です。上記を見て分かるように、世に出回っているアコギのナットは半数以上が44mm程度だと思います。なので細いものに限定してギター探しをすると選択肢がグッと狭まってしまいます。思い込みほど邪魔くさいものはありません。
楽器店で働いている時、そのようなお客さんにナット幅42mmのギターを45mmと偽って試奏してもらったところ、「おお!弾きやすい!」と感動されたことがあります。もちろん後から45mmであることを説明した上で、弾きやすさを数字だけで判断してはいけないことを説明しました。
握るまで分からない、本当の弾き心地
世のギターメーカーは様々な角度からプレイアビリティを追求しています。ネックの感触は特に個人差があるため、誰が握っても弾きやすいものというのはなかなかありません。
そこで数字にとらわれずに弾きやすいギターと出会えるように、①ネックシェイプ、②塗装、③バインディングの有無の3点から判断する方法をこの記事でレクチャーしていきます。
まずは①ネックシェイプ。これはメーカーやモデルごとに異なります。薄い/厚い、U型/V型/C型など、実はネックの形状には結構な種類があります。

僕はナット幅はどうでも良いのですが、ネックは薄くないとダメみたいです (この画像で言うとD型やC型)。V型は一番手に合わないですが、実際これが良いと言う人もいるのです。こーゆうのは実際に握ってみなければわからないことですし、また手に馴染めばナットの幅が気になることはありません。
上の画像の右下にある”Asymmetrical (アシンメトリカル)”は非対称という意味ですが、エレアコで有名な国産ブランド、Takamineが採用しているシェイプです。

ネックの形が非対称になってるんです。親指側を薄くしていますので、ネックを包み込むように握りたい人にはマッチしやすいかと思います。ナット幅も42mmでかなり細いですし。
さて、ネックのシェイプも大事ですが、実は②塗装がどんな仕上がりになっているかも大事です。ツヤツヤのグロス・フィニッシュか、サラサラのサテン・フィニッシュか、この点も少し気にしてみると良いです。

この写真で言うと上2本がグロス (光沢あり)、一番下がサテン (ツヤ消し)です。グロスの方が良いという人もいれば、その逆もいます。全く同じネックシェイプでも、塗装が違うだけで弾きやすくなるというパターンも全然あります。
例えば手汗をかきやすい人がグロス仕上げのネックを弾くと、引っかかりやすくなってしまうことがあるみたいです。僕はサテンが好きですが、持っているギターは全てグロスです。
そして最後に③バインディングの有無についても触れていきます。

このギターのネック、白い縁取りがあるでしょう。これがバインディングです。このパーツは原則として装飾の意味合いが強いのですが、ギターの角を守るという目的もあります。ネックに施されたバインディングは、冬場によくある”バリ”が出にくくなる効果もあり、結構ありがたい存在です。
ただ、これが装備されることによってネックの縁が角張ってしまい、体感的にネックが太く感じる可能性があります。弾きやすさを優先するならばない方がいいかもしれません。
クラシックギターは弾きづらい?
クラシックギターのナット幅は52mmでほぼ統一された規格になっています。スケールの短いものだと50mmというモデルもありますが、アコースティックギターやエレキギターしか弾いたことない人にとってはそれでも太すぎるように感じます。
残念ながらクラシックギター (ガットギター)がアコギと同等のナット幅を持つことは難しいです。なんせ幼い子供でも50mmのナット幅で演奏しているくらいなので、この太さに慣れるしかありません。Takamine、Godin (ゴダン)、Cordoba (コルドバ)などは細いモデルが存在しますが、クラシックギターは弦が太いので、ネックが細いとものすごく弾きづらいんですよね。
もし、エレキギターやアコースティックギターを弾いている人がクラシックギターに持ち替えたくなった場合、弾きやすいギターを探すことは途方ない作業なので、構え方を変えてみるなど工夫が必要です。
クラシックギターは左足を台に乗せ、その上にギターを乗せて背筋を伸ばして弾くのに対し、アコースティックギターは右足に乗せて、ほぼ猫背になって弾きます。


自分が楽な姿勢であればあるほど、ギターは弾きやすくはなりません。背もたれを使わず浅く座り、ギターをしっかり正面に向け、ギターの位置が低ければ高くしてみて、滑るようならストラップか滑り止めを使う…。こういった基本的なことも含めて、左肘が曲がり過ぎていないか、脇が開き過ぎていないか、ネックを親指の付け根で握ってないか、1つ1つ確認して矯正しましょう。ギターの弾きやすさについてあれこれ考えるのは、それができてからの方が良いギターに出会いやすいです。
Midville’s
中村
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中村
音楽講師 / ビートメイカー
『井上 陽水英訳詞集』 著: Robert Campbell <講談社>
内容は日本語を母語にしている僕たちでさえも「不思議!」と思わざるを
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