講師の中村です。
体験レッスンや入会したばかりの生徒さんから、よく聞かれる質問があります。
「毎日どれくらい練習すれば上達しますか?」
これは気になるところですよね。せっかくギターを始めたのだから、効率よく上達したいと思うのは当然です。しかし結論から言うと、上達するために必要なのは練習時間そのものよりも、継続することです。今回は、僕がこれまで多くの生徒さんを見てきた中で感じていることをお話ししたいと思います。
目次
3時間×週2回よりも、毎日15分
最初のうちは1日15〜30分に設定して、指が痛くなったらまた明日、これくらいでOKです。「1日3時間×週7日」のような続かなさそうな目標は、初心者のうちから立てない方が無難です。
それと、誤解してほしくないのでハッキリ言っておきますが、大事なのは時間そのものじゃなくて練習の量×練習の質×継続期間です。練習量と上達量はそんなに簡単に比例しませんので、1日10分しかしてないからダメ、週に2日しかやってないからダメ、ということではなく、それをどれだけ長い”期間”継続できるか。実は音楽業界にはこんな言い伝えがあります。
1日練習を怠れば自分にバレる。2日怠れば指導者にバレる。3日怠れば聴衆にバレる。
Ignacy Jan Paderewski (イグナツィ・ヤン・パデルフツキー)
毎日やること、継続してやることの重要性を端的に表していると思います。第一、仕事や学校がある中で毎日何時間も練習できる人はほとんどいませんし、できないのが普通です。僕の生徒さんでも毎日長時間練習している方ばかりではありません。
しかしながら、できるだけ早く上手くなりたい、人より上手くなりたい、難しいことにチャレンジしたい方が意欲的に1日何時間も練習することは否定しませんし、プロになりたいなど、高い志を持っているなら量、質、期間の全てを上げた方がいいです。Slipknot (スリップノット)のギタリストMick Thomson (ミック・トムソン)は「部屋で1日8時間は練習しろ」「友達をなくすまで出かけるな」「有名になるまで酒を飲むな」などのセリフで有名ですが、まぁそのような硬派なやり方も、プロになりたい場合は1つだと思います。
タイパとの戦い
ネット上によくある「短い練習をより中身のある練習にしよう!」「ダラダラ長時間練習は悪!」といったような発信が目立ちます。このような発信は「長時間練習をただ否定しているだけ」になってしまっているのではないかと心配になります。音楽は1曲を演奏するのに少なくとも数分消費しますので昨今の”タイパ至上主義”的な風潮とは少し相性が悪いです。1日15分の練習であれば、5分の曲を3回通し練習してしまえば終わってしまいます。なので音楽の練習ッて基本的に長くなってしまうのは仕方ないことだと思っておいた方がいいです。
その上で、練習時間がうまく確保できない場合は通し練習よりも更に”目的的な練習”に振り切ってしまうのも1つです。
- 音を鳴らさずに素早くコード・チェンジする練習を20回ずつやる
- メトロノームを使ってリズム・キープを鍛える
- 苦手なセクションを10回練習する
などの部分練習は短時間の練習に向いています。
本当に効率のいい練習方法は、受講生1人1人をパーソナライズしない限り答えなんて出すことはできません。文章で伝えられることなんてこれくらいです。
ただ忘れないでほしいのは、タイパのいい練習が常に正解とは限らないということ。効率だけを摂取したからとて上達が早くなるワケではないですし、「一旦、闇雲にやってみる」という必要悪もあると僕は考えています。なので、発想を変えて”時間を贅沢に使えることを楽しんでしまう”と切り替えてしまってもいいかもしれません。”効率主義”のようなせせこましい考え方は、サステナビリティに欠けますからね。
1日1分から始めたある生徒さんの話
練習を全くしてこないある生徒さん、ある時期から1日1分だけ練習する習慣をつけたそうです。初日はチューニングだけで終わってしまったそうですが、2週間経つ頃には1分以内にチューニングができるようになったと仰せでした。2ヶ月経った頃、「2ヶ月で1時間も練習しましたよ!」と喜んではったので、僕もなんだか嬉しくなりました。
それから、彼は1日の練習時間を2分、3分、5分と増やしていき最終的には1日30分、どんなに忙しくても触るようになって約半年間でスリー・フィンガー奏法 (下の動画のメガネの男性のような高速アルペジオ奏法)を身につけるに至りました。
ちょっとバカバカしいような話にも聞こえますが、例え1分の練習でも2週間に1回しか合わない僕は、彼の変化を明らかに感じることができましたし、小さくても努力と成長を見た瞬間とても嬉しかったのです。「できることからやる、慣れたら時間を増やす」というやり方も悪くないなと感じました。
上達する人は練習のハードルが低い
先ほどの生徒さんの例を見て分かるように、練習のハードルを下げるというマインドは案外良策です。「1日の練習時間は30分と決めたけど、今日は30分できないからやめておこう」という考え方だと続きにくい傾向があります。そうではなく、「今日は忙しいから5分だけ」くらい気楽でいいかもしれません。コードを1つ鳴らしてハイ終わり、これを練習と呼べるかは怪しいですが、ギターを自分から遠ざけない姿勢は少なくとも評価できます。というか、継続する人ッてえてしてこんな感じなんじゃないかなと思います。
もちろん練習しない日があったっていいんです。真面目な人ほど、「昨日弾けなかった」「今日も弾けなかった」と落ち込みます。でも数日休んだからといって、それまで積み上げたものが突然消えるわけではありません。むしろ休息によって頭や身体が整理されることもあります。以前の記事でも書きましたが、人間は練習中だけでなく休んでいる間にも学習しています。
音楽は長距離走。結果を急ぐとつまずいた時にリカバリしづらいのです。
結局、一番上達する人はどんな人か
僕がこれまで見てきた中で、一番上達するのは特別な才能がある人ではありません。音楽を生活の一部にできた人です。朝のコーヒーみたいなものですね。弾くことが当たり前になる。すると自然と上達していきます。毎日何時間やるか?というのはそれほど大事ではないです。それより「来月も楽器を弾いているか」「半年後も続いているか」の方がずっと重要なのです。
練習時間が多い方が有利なのは事実です。でもそれは100時間という膨大な練習時間を1ヶ月でやるか、1年でやるかという違いです。1ヶ月で100時間練習は1日3時間ちょい。できたとしても継続性はなさそう。でも1年で100時間 (1日20分弱)ならできそうって思いますよね。やればやるほど力になりますが、スポーツと違って誰かと競うものではありませんから、無理のないペースで長く楽しんでいけると思います。
Midville’s
中村

