マイクについての基本をおさえておく

講師の中村です。
すでにネットには溢れかえっている情報で恐縮ですが、今日はマイクについての基本事項と最も定番のアイテムについて紹介いたします。

目次

    2種類のマイクの違い

    マイクには主に2種類あります。1つはカラオケや練習スタジオに置いてあるダイナミックマイク、そしてもう1つはレコーディングで使うコンデンサーマイク。

    どちらが優れている、という違いではありません。シチュエーションによって使い分けましょう、というのが基本的な考え方です。それぞれに良し悪しがあり、ピンキリです。

    例えば、100万円の高級なコンデンサーマイクは残念ながらライブでは使い物になりません。後述しますが、コンデンサーマイクは繊細に音を拾いすぎてしまい、ハウリングしてしまうため、ライブでの集音器材としては戦力外です。

    まぁクラシックやブルーグラス (上の写真)などのジャンルでは、ライブでコンデンサーマイクを使うことがあるのですが、あくまでも生音の補助くらいの役割でしかなく、基本的なスタイルではないと思います。

    マイクケーブルについて

    マイクに使うケーブルは一般的にキャノンケーブルとか”XLRケーブルと呼ばれています。バランスケーブルと呼ぶ人を見たことがありますが、バランスケーブルにはいくつか種類があり、必ずしもマイクケーブルだけを指すとは限らないややこしい言い回しではあります。

    ケーブル部分だけだとギターで使うケーブルと見分けがつきづらいですが、プラグの形状が明らかに異なります。このプラグは3ピンと呼ばれていて、ノイズに強くできています。マイクに挿すとロックがかかり、コネクタのボタンを押さないと抜けない仕様です。

    ライブで使う場合はCanare (カナレ)のものがオススメです。音質は普通ですが価格が安く、断線にとにかく強いため現場向きだと考えられます。ただ、マイクケーブルはどこのスタジオにも、どこのライブ会場にもたいてい置いてありますので自分で所有する必要性は薄いかもです。

    ダイナミックマイクの定番モデル

    ダイナミックマイクといえばSHURE (シュアー)SM58SM57

    SM58は”ゴッパー”や”ゴッパチ”などの愛称で知られていて、スタジオ、ライブハウスなどの施設では「マイクといえばこれ」というほどの定番機です。ボーカル用とされていますが (ボーカリスト向けにチューニングされている)、専用というワケではありませんので楽器に使おうがそれはユーザーの自由であります。

    音に関しては、よく言えばクセがありません。この特徴のなさが最大の特徴とも言えます。僕にはどうも中音域が強く感じられて音質的に優れているとは思っていませんが、壊れにくさやノイズの少なさを考えるとやっぱりこれほど実用性の高いマイクはないので、ライブのMC用に1本は所有しています (ON/OFFスイッチ付きのSM58S)。

    そしてもう1本はSM57、通称ゴーナナ、こちらはゴッパーと並ぶ定番モデルなんですが、楽器用にチューンナップされています。ゴッパーと違ってグリル (丸いアミアミ)がないため、より音の発信源に近づいて集音することが可能になっています。ギターやドラムなど様々な楽器に対応するだけでなく、高音に特徴があるので実はこれでボーカルもいけてしまうというハイパフォーマンスッぷり。

    ただしゴーナナはハンドマイクで歌うと、パーツがコロコロと動く音やマイク本体に手が触れる音なども拾ってしまうため、マイクホルダーに固定して使うことをオススメしています。僕の所有している個体は以前YouTubeラジオの収録などで声を録るのに使っていましたが、ハンドマイクで話したりするとノイズが多すぎてやはり使い勝手はあまりよくなかったです。やはりゴーナナはスタンドに固定して楽器用に使うのがいいかも。

    これらのマイクはどこに行ってもだいたい置いてある最も標準的なモデルです。価格もそこまで高くないのでこれらの音を耳で覚えて、自分でマイクを購入する際の基準にしたら良いと思います。

    コンデンサーマイクの定番モデル

    コンデンサーマイクは使用時に電源が必要です。この電源は一般的に”ファンタム電源”と呼ばれていて、多くのインターフェースやミキサーには「Phantom 48V」とか単に「48V」と書かれたボタンやスイッチがついています。それをオンにするとケーブルを伝ってマイクに電源が供給されます。

    そんなコンデンサーマイクの定番モデルについてですが、実は「コレ!」といったモデルがありません。コンデンサーマイクは1本の単価がダイナミックマイクと比べてとても高く、安くても数万円、上位モデルになるとウン百万もします。湿気や衝撃に弱くとても繊細な上、買えば誰でもいい音で録れるワケではなく、マイクからの距離やポジション (マイキング)で録り音の質がガラッと変わってしまうので、録り方にもテクニックが必要です。ゆえに「これさえあればOK」といったモデルがなく、選ぶのも簡単ではないのです。なかなか個人所有するアイテムではないかもしれません。

    例えばレコーディングスタジオで最もよくみかけるモデルはNeumann (ノイマン)U87。これもウン十万しますが、おそらく最も使用されている有名なモデル1つです。

    一方、5万円以下で購入可能なコンデンサーマイクもあります。RODE (ロード)NT1A宅録界隈では (そんな名前で呼ばれてるかは知りませんが)よく知られた名機です。僕も初めてのコンデンサーマイクはこれでした。僕が購入した2010年頃は3万円しないくらいでした。

    価格の割に音質はかなりよく、特にボーカルを録る時は10万円台のモデルに比肩するほど、いい意味で価格と見合ってない音質でした。

    もう少し高めの価格帯になると、Audio Technica (オーディオ・テクニカ)AT4050が定番かなと思います。僕が知る中で最もクセがなく、低音から高音までバランスよく録ってくれるため男女問わずボーカル録りに適してますし、楽器演奏もこれ1本で十分です。

    コンデンサーマイクには実はラージ・ダイアフラムスモール・ダイアフラム2種類があります。上記の3つのモデルように、収音する部品が大きいコンデンサーマイクはラージ・ダイアフラムです。一方、スモール・ダイアフラムにも定番モデルがあります。AKG (アーカーゲー: 通称アカゲ)C451B、通称シゴイチです。

    スモール・ダイアフラムは大きな音の楽器の録音にも耐えられて (音が割れない)、ノイズが入りづらく、特に高音域がとってもキレイに録れるという特徴があります。シゴイチはまさにその特徴を身をもって実現していると言っていいモデルかと思います。アコースティック・ギターのレコーディングではラージ・ダイアフラムと併用して使ったりしますし、グランド・ピアノやドラムのレコーディングやライブではスモール・ダイアフラムのコンデンサーマイクを複数本使用して録ることもあります。

    先ほど紹介したAudio Technica AT4050とシゴイチは僕のYouTubeでも使用しています。

    ところで、オンラインででゲームや雑談などの配信活動をしている人たちが使っているマイクもまた、コンデンサーマイク (ラージ・ダイアフラム)であることが多いです。ネットショップを開くと中華系のメーカーから数千円で販売されているみたいですが、僕が思う配信向けマイクの決定版はこれだと思います。

    Blue (ブルー)というブランドのYeti (イエティ)という配信用/オンライン会議用モデル。Blueはデザイン/音質共に優れたコンデンサーマイクを作っていた会社でしたが、2018年頃にスイスのLogitech (ロジテック)社に買収され、それに伴いブランド名もLogicool G (ロジクール・ジー)へと変更されました。この親会社の意向で音楽用に作っていた高級マイクは現在全て廃盤、その代わりにゲーム配信用マイクの生産に振り切っています。 そのため、もともと配信用に作られたYetiだけは引き続き生産されているみたいです。

    オンラインレッスンの需要が高まったり、オンラインでミーティングする機会が増えたタイミングで僕もYetiを購入しました。今は使う機会があんまりないですが、大切に保管しています。僕はBlueのマイクが大好きで、楽器録音用にDragonfly (ドラゴンフライ)も愛用していました。とってもいいマイクでしたが、Logicool Gの路線変更はとても残念。いつか復活してほしいですね。

    マイクを使う上での注意事項

    マイクを扱う上で以下のことを守ってください。

    叩かないこと。マイクは衝撃に弱いので壊れます。音が出ているかを確認したい時は爪や指先でグリルをカリカリと優しく触るようにしましょう。
    フーと息を吹きかけないこと。湿気にも弱いため、吐息に含まれる湿気でマイクが傷みます。
    マイクケーブルを抜き差しする時は必ずボリュームがゼロになっていることを確認すること

    これが基本です。

    値段の違いは何か?

    マイク、特にコンデンサーマイクは値段にとんでもない幅があります。個人的には20万円以下は「良し悪し (高ければ高いほどいい音)」ですが、20万円を超えると「好き嫌い (録り音に個性が出る)」で選ぶべきかな、という感じです。ではメーカーの値付け基準は一体何なのでしょうか。

    一般的には手作りか機械量産か、音質や素材の良し悪し、デザインと設計、回路の耐久性、真空管の有無などあらゆる面で価格は変動しますが、こーゆうのは実際に使わないと良さを確認できません。なのでこの項ではマイクの内部について少し掘り下げます。

    そもそもマイクは入力した音をスピーカーから大きく出力したり、録音機材に美しく取り込んだりするために使われるワケですが、これらは”マイクによって限りなく原音に近い電気信号を作りだしているだけ”で、厳密にいうと実際の声や音をそのまま拡声しているワケではないのです。

    では良いマイクとそうでないマイクの違いは何か?といえば、その「原音に近い電気信号を作りだす組織」の部分です。マイクの中には振動を感知するダイアフラムという振動板があります。声であろうと楽器の音であろうと、音というのは単なる空気振動ですので、それが振動板にあたることで内部のユニットが刺激され、その刺激を電気信号に変えて音を出すのです。ダイナミックマイクとコンデンサーマイクではその電気信号の作り方が異なるのですが、どちらも「振動を信号に変えてスピーカーや録音機器に送り込む」という挙動は変わりません。

    そしてコンデンサーマイクにはこのダイアフラムの大きさに種類があることは先述のとおりですが、いずれもとても繊細な組織であり、湿気や衝撃に非常に弱い性質があります。高級になればなるほど繊細です。余談ですが楽器やオーディ機器と同じでエイジングもしますので、古い年代のマイクは高音で取引されたりします。

    マイクはピンキリです。自分でマイクを買おうとお考えの方は高頻度で現場に出入りされているか、宅録などクリエイティブな作業をされている方だと思うので、今回は取り扱いについても多少言及しました。何かの参考になれば幸いです。

    Midville’s
    中村