講師の中村です。
ギターショップで働いていた頃、「左利きでもギターは弾けるの?」という質問が多かったことをふと思い出しましたので、今回の記事ではそれについて言及します。
結論から言いますと、もちろん左利きでもギターは弾けますし、左利き用のギターというのも存在します。ただ基本的には左利きの方でも右利き用のギターを使うことが一般的だという認識です。すでに左利き用のギターをお使いの方はもうそれでいいのですが、これからギターを始める人に対しては左利き用のギターはオススメしません。
以下に理由を書いていきます。
目次
理由①右でも左でも難しさは変わらない
ギターはそもそも音が出るまで一定のハードルの高さがある楽器です。左利きのギターを使うことがベストな選択になるとは限りませんし、それが上達を早めることも保証しません。イチローも大谷 翔平も右利きですがバットは左打ちです。(ギター関係ないけど。)
「でも効き手じゃないと長続きしないんじゃないか」と思われる気持ちもわかりますが、諦める人は左右関係なく諦めます。
むしろ左利きの方は左手の方が器用なので、右利き用のギターの扱いに関しては右利きの人よりも多少有利にスタートをきることができる点は大きいと思います (弦を押さえるのは左手なので)。実際、左利きのギター奏者の中には右利き用のギターを使う人もかなり多いです。
- Luna Sea (ルナ・シー)のINORAN
- 星野 源
- ウルフルズのトータス松本
- OASIS (オアシス)のNoel Gallagher (ノエル・ギャラガー)
- Simon & Garfunkel (サイモン&ガーファンクル)のPaul Simon (ポール・サイモン)
- Marl Knopfler (マーク・ノップラー)
など、割と名手が揃っています。
そもそもギターが右利き用になった背景には色んな要因があるのだと思いますが、ほとんどの国で弦楽器は左手で押弦、右手でピッキングをするように発展してきています。きっとそこには合理的な理由があると思うので、わざわざ左利き用のギターの購入を検討する必要はないと思うのです。
理由②: 左利きの人だけが感じるやりづらさ
かといって左利き用の楽器を使うこと自体は否定しません。それが持つ利点/欠点を理解した上であれば問題ないのです。例えばオーケストラでは「他の人と動きが揃わないから」という理由で右利きしか受け入れられないという文化もあったりするのですが、ギターでは左利きの方は他の人と同じ楽譜が使えないことがあり、やや不便です。
一般的に、ギターの楽譜にはコードの図 (ダイアグラム)が書かれています。この図はギターの指板を表していますが、右利きと左利きでは図も反対になるため、G (ジー・メジャー)のコードは下記の図のようになります。
例えばGのダイアグラム (コード図)は左利き用と右利き用ではこんな感じに逆向きになります。しかしながら世のほとんどの楽譜は左利き用に対応していません。ウチのレッスンで作る楽譜も同様で、左利きには対応していません。
ということは、左利きの人は左利き用のギターを手に入れても、楽譜に載っているダイアグラムは逆向きになるため、学習する上でやりづらさが出るのです。
弾き語りの方たちがよく使うUfretというサイト (アプリ)では左利きコードに対応しているようですが、Ufretのコード表記はしばしば間違っていたり実用性に欠けるところがあるので、初心者のうちに間違ったまま覚えると遠回りになるので、現状そこまで有用ではありません。
理由③: 左利き用のギターは割高で数が少ない
それでも自分は左利きだから左利き用に作られたギター (以下”レフティ”)の方がいいのではないか?と思う方はいらっしゃると思います。が、残念ながらレフティの生産数&流通数の少なく、また通常のモデルよりも割高になっている傾向があり、現物を見て購入しづらいというデメリットがあります。この商品数の少なさも僕が左利き用のギターをオススメしない理由の1つです。
「弦を逆向きに張り直せばいいのでは?」と思う方がもいらっしゃるでしょうが、十中八九失敗すると思います。レフティへのコンバージョン加工は実はそんなに簡単ではありません (詳細は後述します)。
最近はネットでギターを買う方も多いみたいですが、よく分からないメーカーのものを買うとデキの悪いものを掴まされて結局損することも多いです。またフリマアプリなどでの個人取引はトラブルが頻発するので個人的にはあまりオススメできません。
それでもレフティのギターを希望する方は、東京の谷口楽器さんの利用をオススメします。ここはギターに限らず、左利き用の楽器を数多く取り揃えているレフティの強い味方です。
右利き用のギターを左利き用に改造するのはアリ?ナシ?
まぁ結論から言うと、これが一番ナシです。気に入った右利き用のギターを購入して、それを左利き用に改造すること自体は不可能ではありません。ただ”理論上できる”と”実際にできる”は全然話が全然違いまして、実質的にはできないと考えるのが筋です。もし右利き用のギターをレフティにチューンナップすればかなり大掛かりでアホくさいほどのコストがかかります。
ただ”理想的なギターが右利き用しか作られてなかった時”は、レフティへのコンバージョン加工が必要になると思います。レフティはそもそも商品数が少ないですから、自分がいいと思える個体に出会いづらいですからね…。その場合はこの魔改造案を採用するしかありません。
以下、魔改造を実施する際の注意点を書いていきます。
ちょっと覚悟がいる、レフティ・コンバージョン (魔改造)
多くの左利きプレイヤーは安易に「弦を左右反対に張れば左利き用にできるやん」と考えます。しかし実際にはそれだけでは左利きにすることはできません。ハンドルを左に付け替えたら国産車も外車にできると言っているようなものです。
弦を左右逆に装備する前にやらないといけないことがあります。
- ナット交換
- サドル交換
- ブリッジ交換
- ピックガード交換
- サイド・コントロールの交換 (エレアコの場合)
- ストラップ・ピン付け替え (必要な場合のみ)
- ストリング・ガイド (エレキギター)
- ピックアップ交換 (エレキギター)
- コントロール・ノブ交換 (エレキギター)
- ジャック交換 (エレキギター)
こんなにあるんです。一目見て「無理だ」と感じた人は聡明です。これらの工賃だけでそこそこいいギターが1本買えるでしょう。
一方で、上記のような改造だけでは解決しない部分もあります。
- アコースティック・ギター内部のブレーシング構造
- カッタウェイの向き
アコギのブレーシングとは中に貼られている補強材で、表からは見えない部分ですが、ギターの耐久性や音質に最も影響する重要なパーツです。
アコースティック・ギターは低音弦側と高音弦側でギター本体にかかっている負荷も違います。当然太い弦である低音弦側に強い張力がかかるため、内部に貼り付けてあるギターの補強材 (ブレーシング)は低音弦側の剛性をより高くして作ってあるのです。
弦を逆に張り替えた場合、板が柔らかい方に太い弦を張り、硬い方に細い弦を張ることになるため、長期的には強度面での不安が残ります。
残念ながらこのブレーシングというパーツをリプレイス (交換)することは現実的ではありません。要するにアコギでは右利き用のものを左利きとして使うのはほぼ無理と結論づけられます。
また、アコースティック・ギターもエレキギターも、カッタウェイの向きが変わるので演奏性は下がってしまい、他の部分をどれだけ改造してもこの問題を解決しない限りコンバージョン手術が終わることはありません。故に、実質的には無理なのです。
ここまでの説明をみても、「よし改造しよう!」と思う人はいないでしょうけれども「それでもいいからやってみたい!」という方はどうぞ。
余談ですが
60年代を代表するギタリストJimi Hendrix (ジミ・ヘンドリクス)、実は弦を左右反対に張ってプレイしていた人物として有名です。上記のような改造はしていませんでしたし、彼はそのリスクをフォローすることもありませんでしたが、とりあえず弦だけ逆に張って演奏していました。
「だったら俺もジミヘンみたいに弦を逆に張るぜ」と思うのは自由です。ただ彼がこのスタイルになったのには時代的に他に選択肢がなかったためであり、この平和で豊かな選択肢だらけの日本人が彼の表層的な部分だけをマネするのはちょっと下世話かなと思います。
そもそもよその文化や他人の経験を私物化するような行為は人としてカッコよくないのでやめた方がいいと思います。
まとめると、改造は×、レフティの既製品は◯寄りの△、右利き用は◎といった意見です。
どうしてもレフティが欲しい!という方は、この記事で書いたように①難易度には大差がないこと、②楽譜や教則本が読みづらくなること、③選択肢が限られ、値段が割高になるという点をよく理解した上で購入すれば基本的には問題ないと思います。
Midville’s
中村
