講師の中村です。
今回は注意喚起です。
生徒さんの中に、「オーディションに合格した!デビューできるかもしれない!」と話してくれる子が稀にいます。聞いたこともないような事務所のオーディションです。あまり水を差すのは好きじゃないですが、こーゆうものの中には若者の夢を利用して高額なレッスン代を請求するだけの単なる詐欺もありますのでご注意ください。
目次
詐欺の手法について
詐欺事務所はSNSの広告などを利用してあたかも華々しいステージが用意されているかのように受験者を募ります。オーディションを主催する会社のWEBサイトは「聞いたことない事務所だけどきっとすごいところなんだ」と思わせるほど作り込んでいます。
コンタクトを取る前に必ずその事務所名をネットで検索しておきましょう。こーゆう会社はネットの悪評を消すのにも相当な労力を使うので見極めが難しいですが、デビュー実績や所在地、ケツモチの会社があるなら色々調べた方がいいです。大前提として、聞いたことないところはやめておきましょう。
僕はオーディションが現場でどこでどのように行われているか分かりませんが、とにかく簡単な審査で一旦合格させて、契約書類をまきます。あとでレッスンを受けさせたいから全員合格なんです。
オーディション運営側は「君は歌が武器だからもっと磨こう」「ダンスも習っちゃおう」「ボディメイクもしよう」などゴチャゴチャ言って、月にウン万円するレッスンを何コマも受けさせてきます。これらは断れません。契約書には「デビューするまで辞められない」「レッスンを必ず受けること」などといった趣旨の文言が必ず書いてあり、それを守らない場合契約違反として結局高額請求されるからです。しかもそれが半年〜1年の期間ではなく、3年〜5年の長期契約であることもザラ。
だからといって、受験者の皆さんの才能がないというワケではありません。本当に優れた参加者もいるでしょうけど、そもそも審査は目的ではないのです。
本当にあったオーディション詐欺の話…
実は僕の教え子でも、この手のオーディションを受けた子が何人かいます。幸運なことに僕の説得により契約には至りませんでした。ある1人を除いて…。
あれはまだ講師になって1年目の時。当時18歳の女の子が「先生今度オーディション受けるんです」と、嬉々として報告してくれたんです。その健気な様子に始めは「あまり要らんこと言わんとこう…」と思い、「詐欺する人もいるから気をつけてね」と軽い注意喚起だけにとどめて、あとは本人の判断を信じて経過を見ていました。すると次のレッスンでこう相談されました。
「オーディションには合格したけど、事務所のレッスン費用が高くて、先生のギターレッスン代を払えない。」
これは困りました。ウチの受講料が払えないのもそうですし、ウチの受講者がワケの分からん連中に騙されかけていることに。
もう契約書にサインしたのかと訊ねると、「した」と。その時に登録料やら写真撮影費などを支払ってしまったそうです。僕はようやく後悔しました。やっぱり老婆心でお節介を言うべきだったと。
ひとまず彼女の経済状況などを勘案して僕のギターレッスンは一旦辞めてもらう形にして、彼女はその高額なレッスンを受けることになりました。結局、レッスン代を払うために昼も夜も働き、よくない人間関係に身を置き、若い大切な時間がややハードなものになってしまいました。
その間、彼女からの連絡はほぼありませんでしたが、しばらくしてから連絡がきた時に、数年間で何があったかを話してくれましたが、僕は”18歳だし自分で色々決めたいだろう”と思って静観したことを心底悔やみました。
彼女は笑いながら「高い授業料だった」と笑って言えるくらいに精神的に強くなっていて、今は音楽から離れて元気に過ごしているとのこと。
プロになるとは何かを考える
以後も僕のところには「プロになりたい」と考えながらレッスンを受けてはる人は一定数います。ただ残念ながら僕は過去の経験から相手にとって都合のいいことばかり言えません。とにかく
「3年間、社会に出ろ」
と伝えています。世間知らずほど怖い生き物はいません。だから社会人生活しろと言います。
どうせなら音楽のあるところで仕事してみてください。業界のことも少しくらいは見えるし、音楽に関する色んな相場がみえるので、変な人に騙される機会も減るでしょう。スタジオとか、ライブハウスとか、ライブバーとか、楽器屋さんとか、メーカーとか、出版社…なんでもいいです。とにかくこの大きな音楽産業の中の一員として、与えられたことをただ一生懸命やってみるといいです。楽ではないかもしれませんが、一生懸命やってれば誰かが見てくれます。
そうして1つ1つ仕事を覚えていって、自分のしたことで誰かに喜んでもらってください。僕は仕事の本質はそこだと思っています。これは演奏家になっても変わりません。ナンボ歌や楽器が上手くても人間終わってたらやっていけません。あとは自分にしかないコレ!というものを突き詰めてキチガイになってください。
音楽家は個人事業主という体裁なので、”社会人として一定のレベルでいる”ことは必須条件だと思います。会社員と違うのは自分で仕事を取ってこないと (作らないと)生きていけない点です。音楽だから特別ではありませんし、誰かに引き上げてもらうなんてこともありません。資本主義は何でもありの弱肉強食サバイバルなので、誰かがエサをくれるのを待ってたら自分が誰かのエサになるだけですよ。泥水すすってでも生き延びるんです…社会は学校ではありません。
それに、なりたいものが決まっているなら、さっさと現場に近づいた方が上策です。これ音楽に限らず基本だと思います。年齢と共に近づきづらくなりますから。←ここ大事。
騙されない自分を作ろう
この手のオーディション詐欺に関しては騙す人間が一番しょーもないのは言うまでもありませんが、見方を変えるとこのしょーもない詐欺師たち人間の甘さをよーく知っています。
「リスクは取りたくありません、努力もしたくないです、でも何者かになりたいです!」
騙される人というのはこーゆう人たちです。どこかの事務所に所属すれば自分で頑張らなくても仕事を与えてもらえる!と思ってる人は、そもそも業界の相場を知らないので、多少高いレッスン代も喜んで払ってくれます。最高のカモですよね。
その甘さを吹っ飛ばしてくれるのは、「行動すること」以外にないと僕は思います。だから現場に行けッて話なんです。でもなかなか腰が重くて楽な方に…楽な方に…、ッてのが人間の性。仕方ありません。
その重い腰を動かすには、前にも一度書いたことあるんですが、大きすぎる目標を持ってください。目標があべのハルカスくらいデカければ、比叡山で迷子になってもまた帰って来れる可能性はあります。信念持って動いていれば、詐欺師だろうがマルチだろうが、騙されることはないでしょう。
あるいは僕の場合、「自分は若い時に気が狂うほど何かに夢中で、体を張って挑戦したなぁ」と思い返しながら酒を飲みたいですね。(酒が飲めるほど健康なら…。) いかんせん好奇心が高いので制御不能になることもしばしばありますが、10代の時から割とこーゆう考え方だったかもしれません。その時の酒が美味いかどうかは、今の自分にかかっているワケです。
ということで締めくくりになりますが、今後も僕の生徒さんたちが被害に遭わないよう、最後に『ミナミの帝王』からこんな言葉を送ります。
法律いうのは弱いもんの味方やない、知っとるもんの味方するんや!!
萬田 銀次郎
Midville’s
中村

