楽器の日 〜2024年版〜

講師の中村です。
本日66日は楽器の日だそうです。「芸事は6歳の66日から始めよ」という習わしが由来とのこと。

昨年の楽器の日には自分のメインギターのアコギを紹介する記事を投稿しておりますが、今年楽器の日に託けて自分の愛器自慢でもしてみようと思います。

目次

    Epiphpone Emperor-J

    いわゆるジャズ・ギターと呼ばれるタイプのエレキギターです。”フルアコ“とか”フルホロウ・ボディ・ギター”など、色んな呼び方があります。ライブでも使えるようなエレキギターは基本これしか使っていません。本器はEpiphone (エピフォン)の日本製ライン、Epiphone Japan (エピフォン・ジャパン)の名前で作られたEmperor-J (エンペラー・ジェイ)です。僕は単に”エンペラー”と呼んでいます。

    シリアル・ナンバーから推察するに、1989年製なので僕と同い年。工場がマツモク工業から寺田楽器にうつった初年度です。マツモク製の方が世間的な評価は高いですが、僕は寺田製の楽器も好きなんであんまりこだわらないです。実際これくらい古いギターともなると大差ない気がします。

    出会い

    2005年頃、僕がまだ高校生の時、Joe Pass (ジョー・パス)というギタリストの音楽に出会いました。彼はすでに亡くなっていましたが、今の僕の演奏スタイルに大きな影響を与えてくれたプレイヤーの1人です。

    好きなギタリストが使うギターと同じものを使いたくなった僕は、情報がないながらも海外のサイトを訳しながら調べたのですが彼の使用ギターはGibson (ギブソン)と書いてあるばかりで、とても高校生には買えず断念。せめて似たようなモデルを探そうと検索すると、アメリカのEpihpone社からJoe Passモデルなるものが発売されていることを知り (当時3-4万円くらい)、楽器屋さんを巡ることに…。ただ田舎では実機のお目にかかる機会がなく、時間をかけて札幌市内の楽器屋さんを回ってようやく見つけた1本を試奏しました。

    モデル名はEmperor II Joe Pass (エンペラー・ツー・ジョー・パス)で、つい最近まで生産されていたロングセラーモデル。本来Emperorは同社のジャズ・ギターの中では最高峰モデルに位置するシリーズで、見た目は最高に上品なんですが、1950年代にGibson社に買収されて以降のEpiphoneは主にアジアで生産されており、作りもあまり良くなく、基本的には初心者がターゲット。アメリカで作られていた頃とは装飾やヘッドの形状が変わっているため、パッと見で廉価版であることがバレてしまうのです。正直、それはイヤでした。

    当然、試奏した時の感想は…う〜ん、といった感じで (アジア製への色眼鏡もあっただろうけど)、当時の僕には全くグッとこず。何本かあるうちの1本ならいいけど、ほしいのは長く使えるメイン器でしたので、”コレじゃない感”が強かったのです。

    しかしながら、その名前のカッコよさ、見た目の派手さ、ボディのデカさなどから高校生の中村少年は”Emperor (皇帝)”というシリーズ自体を気に入ってしまい、もういっそのことJoe Passモデルじゃなくていいから予算内におさまるEmperorを探そうということで、中古も視野に入れつつギター探しの旅が始まりました。

    しばらく経った時、「”エピジャパ“と呼ばれる日本製のEpiphoneがあるらしい」という情報をつかみました。しかもそれが「値段の割にイイ!」という評価。…が、地元楽器店のスタッフさんは「エピジャパ?そんなものは知らない。」「あぁ、EpiphoneのElitist (エリーティスト: 2000年頃から登場した日本製シリーズ)のこと?あれはイマイチだよ。」などとあしらわれてしまったのでした。ちゃうんです…!1990年くらいまで作られてた、Elitistとは別シリーズの日本製エピがあるんです……!

    もう田舎の楽器屋さんでは話にならなかったので、そこから半年探したのか1年探したのか、詳しい期間は覚えてませんが状態のいい中古の個体を見つけて、関東の楽器屋さんから中古のEmperorを通販で購入しました。それがこのEpiphone Emperor-Jでした。試奏はせず買ってしまったのですが、状態は良好、金属パーツに多少の燻みはありましたが、非常に美しい音で作りもよく、毎日それで練習してました。

    仕様

    スペック表をみてもチンプンカンプンな方もおられると思いますが、まぁ仕様は特別なものではなく、結構”普通”です。

    ヘッドのデザインが「ラージ・クリップド・ダブ・ウィング (鳩の翼の形ようなに切り取られた柄)」となっていますが、これはアジア製Epiphoneに多く見られるタイプです。Epiphoneといえば「オープン・ブック」と言われるもっとシンプルなヘッドが有名なんですけどもね。

    当初はこのサンバースト・カラー+ゴールド・パーツの組み合わせが好きで使っていましたが、加齢とともに「ゴールド」がだんだん気に入らなくなり、かなり改造をしまくりました。現在の姿がこちらです。

    黒い糸巻きは同じGrover (グローバー)社の色違いモデル、102BCにリプレイス。これなかなか見つけられなくて苦労しました。

    ボディの方もピックアップをBareknuckle (ベアナックル)社のThe Mule (ザ・ミュール)というモデルをロウ付けしたものに変え、真鍮カバーは緑青 (サビ)がついてみっともないので黒色のカバーに変更。見た目はいいですが、BareknuckleのThe Muleは独奏には全く向いてないピックアップで個人的には失敗したなと思っています。パワーもそんなにない。次買うなら黙ってSeymour Duncan (セイモア・ダンカン)にしときます。

    トグルスイッチの先端、ボリュームのツマミ、ナットに至るまで全て黒いパーツを購入してリプレイス。写真では見えませんが、ジャック (ケーブルを挿すところ)の外側にむき出している六角ナットも黒色に変えています。

    オリジナルパーツから見ればテール・ピース以外ほぼ全てのゴールド・パーツを排除した形になりました。今はこのルックスが気に入っています。

    Morrisの”ベベル”とは違う距離感

    前回紹介したベベルは2014年に購入。この年は演奏活動を本格的に開始した時期でもあり、ベベルは僕にとって仕事道具感が強いですが、エンペラーは製造年と僕の生まれ年が同じで、一緒に大阪に出てきたというちょっと特別な愛着があります。

    ベベルを購入する前はこのギターしか持っていませんでしたので、これを持って色んなライブに出演しました。イベント会場での演奏、先生の演奏のお仕事のトラ (代理)、飲食店での定期演奏やフェリーの中での演奏、その辺でやってるオープンマイク…札幌から鹿児島までの全国のストリート・ジャズ・イベントに出演する際など、どこへ行くにも持って行ったのはエンペラーでした。

    鹿児島のイベントに出演した時は司会者の方から「ラジオ番組に出てみないか」とお誘いいただき、初めて出演しました。

    今はエンペラーを仕事で使うことは全くありません。たまにアンプに繋いで楽しみのために演奏するくらいです。YouTubeにあげたこの動画の音源のソロ部分やリフの部分はエンペラーです。

    日本製への再評価

    先ほどもチラッと書きましたがEiphoneは1950年代まではGibsonと双璧をなすライバル会社でもありましたが、Gibson社により買収されてしまい現在は「Gibson公認の廉価版ギターを量産している初心者向けメーカー」みたいに認識している方が多いと思います。

    ただ初心者向けと言ってもこの価格帯でここまでデザインに凝ったブランドは他にほとんどありません。

    60年代まではアメリカで生産されており、その頃の実機 (ヴィンテージ品)は現在でも高値で取引されています。しかしながら諸々の諸事情で (主に生産コストの関係で)工場をアジアに移そうという話が持ち上がり、斯くして1970年代からEpiphoneは日本製になったのです。

    今はなき「マツモク工業」というギター製作所がEpiphoneの生産を引き継ぎ、しばらくは作っていたのですが、80年代に入って日本製のコストが上がってきたことが原因で、韓国に生産拠点を移したのが1988年頃。

    ガチ年表作ったんですが (違うところあったら教えて)、ちょうど僕のは日本製のマツモク工業から寺田楽器に移行する過渡期のモデルで、シリアル・ナンバーから見るに寺田楽器の最初期のロットと思われます。

    この年表から分かることは、1970年代からEpiphoneの生産拠点はアジアに集中しており、2020年には50年ぶりに一部のモデルでUSA製が復刻しました。この間ずっとEpiphoneの高級ラインを守ってきた日本の寺田楽器は、Epiphone以外にも多くのOEM (ブランド品を委託生産すること)をしている業者で、クオリティは非常に安定していることで評価が高いです。フジゲンと並ぶ日本のOEM工場の代表格ですね。

    このエンペラーの使用を通して若かりし頃の僕は、日本製ッていいなぁ、という価値観が刷り込まれていきます。とにかく故障が少なく丈夫。コロコロとギターを買い替える財力もないので、色んな場所へ持ち出してライブするにはギター本体のタフさもある程度必要だと思ったのです

    そのためMorrisのベベルを買う時も、ぼんやりと「日本製なら長く使えそうだな」ということを考えていました。エンペラーは購入してから15年くらい経ちますが、まだまだ相手してもらいたいです。

    Midville’s
    中村