講師の中村です。
本日6月6日は”楽器の日”だそうです。「芸事は6歳の6月6日から始めよ」という習わしが由来とのこと。
昨年の楽器の日には自分のメインギターのアコギを紹介する記事を投稿しておりますが、今年も楽器の日に託けて自分の愛器自慢でもしてみようと思います。
目次
Epiphpone Emperor-J
いわゆるジャズ・ギターと呼ばれるタイプのエレキギターです。”フルアコ“とか”フルホロウ・ボディ・ギター”など、色んな呼び方があります。ライブでも使えるようなエレキギターは基本これしか使っていません。本器はEpiphone (エピフォン)の日本製ライン、Epiphone Japan (エピフォン・ジャパン)の名前で作られたEmperor-J (エンペラー・ジェイ)です。僕は単に”エンペラー”と呼んでいます。
シリアル・ナンバーから推察するに、1989年製なので僕と同い年。工房がマツモク工業から寺田楽器にうつった初年度です。後述しますが、マツモク工業製の方が世間的な評価は高いですが、僕は寺田楽器製の楽器も好きなんであんまりこだわらないです。実際これくらい古いギターともなると大差ない気がします。
出会い
2005年頃、僕がまだ高校生の時、僕はJoe Pass (ジョー・パス)というギタリストが大好きでした (今もですが)。彼はすでに亡くなっていましたが、今の僕の演奏スタイルに大きな影響を与えてくれたプレイヤーの1人です。
好きなギタリストが使うギターと同じものを使いたくなった僕は、情報がないながらも海外のサイトを訳しながら調べたのですが彼の使用ギターはGibson (ギブソン)やIbanez (アイバニーズ)と書いてあるばかりで、とても高校生に買えるモノではなく断念。
せめて似たようなモデルを探そうと検索すると、Epihpone社から”Joe Passモデル”なるものが発売されていることを知り (当時3-4万円くらい)、楽器屋さんを巡ることにしました。しかし僕の田舎では実機のお目にかかる機会がなく、時間をかけて札幌市内の楽器屋さんを回ってようやく見つけた1本を試奏しました。
モデル名はJoe Pass Emperor II (ジョー・パス・エンペラー・ツー)で、つい最近まで生産されていたロングセラーモデル。本来EmperorはEpiphone社のジャズ・ギターの中では最高峰モデルに位置するシリーズで、アメリカ製のものは何十万円もします。このモデルはそれにJoe Passの名前を冠して、アジアで安く生産した量産ギターでした。
1950年代にGibson社に買収された後のEpiphone社は生産拠点をアジア (主に中国)に移し、基本的には初心者がターゲットで、”Gibsonの廉価版を作ってるメーカー”という位置付けでした。当然、試奏した時の感想は…う〜ん、といった感じで (アジア製への色眼鏡もあっただろうけど)、当時の僕には全くグッとこず。
何本かあるうちの1本ならいいけど、ほしいのは長く使えるメイン器…コレじゃない!
しかしながら、その名前のカッコよさ、見た目の派手さ、ボディのデカさ、”Emperor (皇帝)”という名前の響き、全て自分好みであることは間違いなく、もはやJoe PassモデルじゃなくてもいいからEmperorというギターを所有したいという気持ちに変わっていきました。
しばらく経った時、「”エピジャパ“と呼ばれる日本製のEpiphoneがあるらしい、そのラインナップの中にEmperorがあるらしい」という情報をつかみました。しかもそれが「値段の割にイイ!」という評価。…が、地元楽器店のスタッフさんは
- 「エピジャパ?そんなものは知らない」
- 「あぁ、Epiphoneのエリーティスト・シリーズのこと?あれはイマイチだ。」
などとあまり高く評価していない様子でした。ちなみにエリーティスト・シリーズは確かに日本製のEpiphoneなんですが、いわゆるエピジャパと比べると年代的に新しく、僕が狙っているものとはちょっと違う。
さらに細かくいうと、エピジャパは2000年頃まで作っていて、それ以降はエリーティストというラインナップに変わります。エピジャパは1989年頃までマツモク工業というところ生産されており、1989年から2000年頃までは寺田楽器で生産されていました。マツモク工業製のものは特にクオリティが高く、中古市場にはほぼ出回りませんが、現在でも高値で取引されます。
マツモク製も寺田製も、もう田舎の楽器屋さんではお目にかかれなかったので、そこからネット上をくまなく探して状態のいい中古の個体を見つけて、関東の楽器屋さんから中古のEmperorを通販で購入しました。
それがこのEpiphone Emperor-Jでした。音にこだわりがあったのに試奏せず買ってしまったので、届くまで不安でしたが状態は良好、金属パーツに多少の燻みはありましたが、美しい音で作りもよく、毎日それで練習してました。
仕様
スペック表をみてもチンプンカンプンな方もおられると思いますが、まぁ仕様は特別なものではなく、結構”普通”です。
ヘッドのデザインについては、Epiphoneといえば「オープン・ブック」と言われるもっとシンプルなヘッドが有名なんですが、このギターは「ラージ・クリップド・ダブ・ウィング」となっています。これはアジア製Epiphoneによく見られるデザインです。
当初はこのサンバースト・カラー+ゴールド・パーツの組み合わせが好きで使っていましたが、加齢とともに「ゴールド」がだんだん気に入らなくなり、かなり改造をしまくりました。現在の姿がこちらです。
黒い糸巻きは同じGrover (グローバー)社の色違いモデル102BCにリプレイス。これなかなか見つけられなくて苦労しました。
ボディの方もピックアップをBareknuckle (ベアナックル)社のThe Mule (ザ・ミュール)というモデルをロウ付けしたものに変え、真鍮カバーは緑青 (サビ)がついてみっともないので黒色のカバーに変更。見た目はいいです、音もいいです。ただ独奏には全く向いてないピックアップなので、まさにJoe Passがやるような独奏ジャズはこのギターでは難しい。いつかバンドを組んだ時のためにこのギターには休んでてもらおうと思います。The Muleはパワーもそんなにない。
トグルスイッチの先端、ボリュームのツマミ、ナットに至るまで全て黒いパーツを購入してリプレイス。写真では見えませんが、ジャック (ケーブルを挿すところ)の外側にむき出している六角ナットも黒色に変えています。
オリジナルパーツから見ればテール・ピース以外ほぼ全てのゴールド・パーツを排除した形になりました。今はこのルックスが気に入っています。
Morrisの”ベベル”とは違う距離感
前回紹介した”ベベル”は2014年に購入。この年は演奏活動を本格的に開始した時期でもあり、ベベルは僕にとって仕事道具感が強いですが、エンペラーは製造年と僕の生まれ年が同じで、一緒に大阪に出てきたというちょっと特別な愛着があります。
ベベルを購入する前はこのギターしか持っていませんでしたので、これを持って色んなライブに出演しました。イベント会場での演奏、先生の演奏のお仕事のトラ (代理)、飲食店での定期演奏やフェリーの中での演奏、その辺でやってるオープンマイク…札幌から鹿児島までの全国のストリート・ジャズ・イベントに出演する際など、どこへ行くにも持って行ったのはエンペラーでした。
鹿児島のイベントに出演した時は司会者の方から「ラジオ番組に出てみないか」とお誘いいただき、初めて出演しました。
このギターの改造の過程で、The Muleというピックアップを選んでしまったことにより独奏が難しくなったため、今はエンペラーをライブで使うことは全くありません (サポートや音源制作チームの方では使っています)。基本的にはたまにアンプに繋いで自分の楽しみのために演奏するくらいです。
ちなみにYouTubeにあげたこの動画の音源のソロ部分やリフの部分はエンペラーです。リード・ギターとしてはまぁ嫌いじゃないんですがね。ラウンド弦にした方がいいかも。
日本製への再評価
Eiphoneの世間的評価は「Gibsonの廉価版を作っている初心者向けのメーカー」という感じでしょう。でも実は1950年代まではGibsonとトップ争いをするライバル会社でもありました。1957年Gibson社により買収されてしまい、1970年以降のEpiphoneは製造拠点をアジアに移し、Gibsonと対抗する術がなくなってしまいました。
ただ「Gibsonの廉価版」と言ってもこの価格帯でここまでデザインに凝ったブランドは他にほとんどありません。
買収された後もしばらくはアメリカで作っており、その頃の実機 (ヴィンテージ品)は現在でも高値で取引されています。しかしながら諸般の事情で (主に生産コストの関係で)工場をアジアに移そうという話が持ち上がり、斯くして1970年代からEpiphoneは中国製や日本製になったのです。
アジアに拠点を移した当初は「マツモク工業 (1989年廃業)」引き継ぎ、しばらく作っていたのですが、もっと安い初心者向けのものを作ろうということで1988年頃に韓国に拠点を移します。1989年以降のハイクラス・モデルは日本の寺田楽器。
言葉で説明するとややこしいので、ガチ年表作ったんですが (違うところあったら教えて)、ちょうど僕のは日本製のマツモク工業から寺田楽器に移行する過渡期のモデルで、シリアル・ナンバーから見るに寺田楽器の最初期のロットと思われます。
この年表から分かることは、1970年からEpiphoneはアメリカで一切の生産をしていません。そして2020年には50年ぶりのUSA製復活を遂げました。
この間ずっとEpiphoneの高級ラインを守ってきた日本の寺田楽器は、Epiphone以外にも多くのOEM (ブランド品を委託生産すること)をしている業者で、クオリティは非常に安定していることで評価が高いです。フジゲンと並ぶ日本のOEM工場の代表格ですね。
このエンペラーの使用を通して若かりし頃の僕は、日本製ッていいなぁ、という価値観が刷り込まれていきました。派手さはないけど、どこに持っていっても状態は安定するし、とにかく故障が少なく丈夫。コロコロとギターを買い替える財力もないので、色んな場所へ持ち出してライブするにはギター本体のタフさもある程度必要だと思ったのです。
そのためアコギを買う時もぼんやりと「日本製なら長く使えそうだな」ということを考えていて、どこかの個人手工家にオーダーしようかと迷っていたところに、ベベルという選択肢が出てきたのです。Morrisは日本製だし、と思って迷わず購入しました。あれから早10年。
エンペラーは購入してから15年くらい経ちますが、まだまだ相手してもらいたいです。そのうちバンドを組む時は、このギターをメインにしようと思います。
スペックや歴史のことばかりで、僕のエンペラーに対する愛着はあまりお話しできませんでしたが、いつかまたこのギターが日の目を浴びることができたら僕も嬉しいです。出会いは18歳の時ですが、同い年のギターなので、一緒に歳をとっていきたいと思います。
Midville’s
中村

