[レッスン] ブルースを弾こう! 第2講

講師の中村です。
テキストレッスン、「ブルースを弾こう」第2講。

前回は、ドミナント・セブンスターン・アラウンドディグリー・ネームI – VI – II – V (イチロクニーゴー)などといった用語が出てまいりました。こういった知識は繰り返し使うもの”ですので、覚えるようにしてください。ということで第2講スタートです。

目次

    伴奏にさらなる味付けを

    前回、ターンアラウンドのコード進行のパターンとして「I – VI – II – V (イチロクニーゴー)」というのをやりました。

    下の画像は、元のコード進行 (I – V)に「I – VI – II – V」を代入したものです。

    前回はここまでやりました。 この音源は最後の2小節を変更する前のデモ演奏。

    次はは「I – VI – II – V」でシメたバージョン。

    最後だけ違いますね。 さて次のステップは、ターン・アラウンドと同じようにI – V」の進行が使われている他の部分にも「I – VI – II – V」を代入してみようという試みです。

    上の画像の赤で囲った部分のコード進行をディグリー・ネームで見てみると「I – I – V – V (つまり I – V)」になっています。ターン・アラウンドで加えたアレンジのように、ここにも「I – VI – II – V」を代わりに使うことができるのではないか?

    試しにやってみましょう。

     

     

    キレイに1小節ずつ、ハメ込んでみました。

    画像だけではわかりづらいと思うので、音源もつけてみます。

    いかがでしょうか。伴奏の違い、感じていただけましたか?同じメロディを弾いていても少し展開したように聴こえたかと思います。

    このように、「I – V」の部分には「I – VI – II – V」を代理として使うことが可能です。

    ドミナント・モーションを取り入れる

    さらにちょっとしたことではありますが、「II – V (ツー・ファイブ)」を代理的に用いることも可能です。下の赤で囲った部分、ここで使います。

    この赤で囲んだところ、Iのコードが2小節に渡って鳴っている状態です。変化が少なく、演奏にノッペリ感が出ています。なので、4小節目のE7 (I)の手前に「II – V (ツー・ファイブ)」を入れ込んでみたいと思います。前回使ったダイアトニック・コード一覧 (E)の、IIVを見てみましょう。

    キーがEの時の「II – V」はそれぞれF#m (II)B (V)ですが、ブルースなのでセブンスを使いたいところ。なので、今回はF#m7 (II)B7 (V)を使うようにします。そうすると

    このようになります。実際にちょっと弾いてみましょう。

    ディグリー・ネームにおける「I」は、その曲のキーを決定づけたり、始まりや終わりには欠かせない存在です。”主和音 (もしくはトニック)”と言います。「I」のコードに進む手前に「II – V」を挿し込むことはジャズやポップスでは非常によくあることで、より解決感のあるスッキリしたコード進行になると言われています。このコード進行をそのまま「ツー・ファイブ・ワン」などと呼んだりします。

    前回やった「I – VI – II – V (イチロクニーゴー)」は、その後に「I」に解決することが基本なので、一連の流れは「I – VI – II – V – I」となり、最後の3つを切り取るとまさに「ツー・ファイブ・ワン」となるのです。

    この「ツー・ファイブ・ワン」において、「V」から「I」に進む流れを「ドミナント・モーション」と言います。これはソロを弾く人やメロディを作る人にはあとあと関係ある話なので頭の片隅にでも置いといてください。

    セカンダリー・ドミナント

    実はもう1箇所、退屈な場所があるんです。それがこの赤で囲んである、この部分。

    ここにも「II – V – I (ツー・ファイブ・ワン)」の流れを使っていきましょう。ただ1つ注意点があります。先ほどはE7 (I)に解決するように「E7に対するIIV」を選出しましたが、今回はA7 (IV)に解決しなければなりません。この場合、A7を一時的に「I」とみなして「II – V」を探し出さないといけない。となると、Aのダイアトニック・コードを知る必要がありそうです。

    それぞれBm (II)E (V)であることがわかりました。セブンスを付けてあげて、Bm7 (II)E7 (V)を実際に使うことになります。

    では実際に演奏してみるとしましょう。

    このように、一時的に違うキーのダイアトニック・コードを借りてきてII – V – I (ツー・ファイブ・ワン)」や「V – I (ドミナント・モーション)」の流れを作ることができます。この時借りてきた「II – V」のことを「セカンダリー・ドミナント」といいます。セカンダリー・ドミナントはこのように一時的な転調として現れることもあれば、曲中でスムーズに転調をする際の繋ぎ目として機能することもあります。これもポップスでは大変多く使われる手法です。ただしどんな曲のどんな部分でも当てはまるものではないので、慎重に取り扱い、耳と感覚を駆使して判断すればOK

    エクステション・コードを使おう

    今回最後のテーマエクステンション・コード」を試してみたいと思います。「エクステンション・コード」は最もプレーンなメジャーやセブンスなどの和音に9th (ナインス)や11th (イレブンス)などの、さらに高い音を重ねていった”拡張和音 (=Extension Chords)”のことです。より落ち着きがあったり、あるいは不安感があったり、普通のコード以上に繊細なキャラクターを持っているのでより広く深い表現が可能になります。

    俗にいう「テンション・コード」というやつです。日本ではそういった和音のことをしばしば”緊張感 (=Tension)がある和音”と表現します。そのため、「エクステンション・コード」のことを「テンション・コード」などと呼ぶのです (…が、どうやらこれは和製英語のようです)。

    念の為この記事では「テンション・コード」のことを「エクステンション・コード」と言うようにします。もちろん意味は同じです。

    無数にあるこれらのコードを、いつ、どのように使うか?どうやって覚えるか?をここで端的に説明するのは難しいので、それは別の機会にするとして、この項のゴールは和音の違いを感じていただくこととします。

    さて前置きが長くなりましたが、いくら書いても言葉ではピンとこないと思うので、試しにの赤い部分をエクステンション・コードに変えてみたいと思います。

    ただ、これではあまりにも弾きづらいです。もう少し押さえやすいフォームに変えましょう。

    実際に演奏してみたいと思います。

    ん〜、楽譜どうりに弾いてみたワケですが、ところどころ「これでいいのか?」感があるように思います。理論上おかしくなくても、実際にやってみると違和感がある、ということは往々にしてあるものです。

    どうでしょう。ほんの少しですが、変えてみました。

     

    まぁ、Demo6とDemo7の違いは微々たるものです。分からなかったとしても、今は大きな問題ではありません。とりあえず、ナインス・コードやセブンス・シャープ・フィフスなどの独特の響きを感じてもらい、アレンジを加える前のデモ演奏と比べて、どんな風に違うのかが聴き分けられればそれでOKです。

    最後にDemo1とDemo7を比較してみましょう。

    分からなかった、という方は「どうせ自分には違いがわからない」などと決めつけたりせず分かるまで何度も聴いてください。そして、全部セブンスで弾いたDemo1と、ナインスなどのテンション・コードを多用したDemo7とで、どんな違いがあるかを言語化できるといいです。味や風景で例えてみるとわかりやすいです。

    「なぜE7をE9になるの?」「B7(#9)ッて何なの?」などと色々な疑問がわくと思います。それは別の記事で参照してもらうことにします。理論はあと!先に耳を鳴らしてください。

    元々こんなにシンプルだった譜面が、今回の「代理コード」「II – V (ツー・ファイブ)」「ドミナント・モーション」「セカンダリー・ドミナント」「エクステンション・コード (テンション・コード)」などを駆使することでどんどん華やかになっていきました。

    いわゆるオーソドックスなデルタ・ブルースのテイストは失われ、結果的にジャズ味を増した形になりましたが、こういった工夫が発展した表現につながっていきます。そのカギとなる知識が今回もたくさん出てきました。よく復習してみてください。

    「ブルースを弾こう」レッスンはあと2回を予定しています。次回は「ボイシング」についての講義がメインで、複雑な理論の話をする予定はありません。


    Midville’s
    中村