講師の中村です。
ギターを始めたばかりの方から、「どれくらいで上手に弾けるようになりますか?」という質問をよく受けます。気になりますよね。せっかく楽器を買ったのだから、できれば早く上手くなりたい。できれば半年後には好きな曲を弾けるようになりたい。できれば1年後には人前でカッコよく演奏したい。その気持ちはよく分かります。
しかし、この質問に対して僕はいつも少しばかり困惑するのです。忖度して「1年です!」と答えればウソになる可能性があるし、「納得のいく演奏なんて一生できません」と本音を言えばきっと嫌がられるだろうし。そもそも「上手い」の定義とは何か?みたいなことを考え出すと、こんなに答えにくいことはないのです。
ということで今回はギターは何年で上手くなるのかについて、考えを書きます。
目次
ギターは何年かかるのか
何年で上手くなるかを定義する前に、上手いを定義していきたいです。僕は上手いには結構な種類があると思います。それぞれに年数をつけるとしたら
・コピーが上手い→半年〜1年
・カヴァーが上手い→半年〜1年
・特定のジャンルの演奏が上手い→3年以上
・アドリブが上手い→3年以上
・楽器を鳴らすのが上手い→3年以上
・ステージでのパフォーマンスが上手い→5年以上
・耳コピができる→10年以上
・アレンジが上手い→10年以上
これらは全部「上手い」に含まれます (年数は目安です、僕の体感的なもので根拠は薄いです)。それぞれ難易度は全く違います。下に行くほど”玄人しか分からないスキル”になってくると思います。
その上で、上手いとはどのレベルのことを言うのか?つまり、「何年で上手くなるか」の答えは、どこを目指すかによって全く変わるということです。
弾き語りなら半年〜1年で十分楽しめる
多くの初心者の方が目指すのは
・コードを見ながら弾ける
・簡単な弾き語りができる
・数曲レパートリーがあるなど
この辺りのレベルだと思います。これは週に数回練習できる方なら半年〜1年程度で、自分が「楽しいなぁ」と感じられるくらいのクオリティでカヴァーやコピーができると思います。(個人差はあります。)
「全く弾けない人」から「楽しめる人」になるだけなら、そこまで長い年月は必要ありません。
特定のジャンルをやるなら3年以上
ジャズ、ブルーグラス、メタル、フィンガースタイルなど…もし何か特定のジャンルに魅せられたなら、そのジャンルの勉強 (練習)を3年ガマンできる人は相当な資産を作れると考えていいと思います。もちろんキッチリ3年後に何かが起きるワケではありませんけどね。
YouTubeでジャズレッスンをしているギタリストの宇田 大志さんが出版した教則本は、『3年後、確実にジャズ・ギターが弾ける練習法』というタイトルでした。この本は”実際にジャム・セッションに参加する”までが目的になっていて、アドリブやコンピング (伴奏)をするための徹底的なコード解析がかなり優しく書かれてあります。色々な単元をクリアして着実に上達を狙うならやはり3年が目処です。
僕が長く親しんだ空手も、一般的には初段 (黒帯)を取るのに3年~10年かかります (流派によって結構違う)。僕は初段まで2年で、結構早かったわりに二段を受けるまで結構長かったです。他にも落語、板前、大工など何かを極めようと思ったらそれなりに長い修行期間が必要だと言われています。音楽の世界ではプロより達者な一般人はそこかしこにいてますが、そーゆう人たちは最初から上手かったのではなく、単純に”学問に王道 (近道)なし”の言葉を本質的に理解しているのだと思います。
楽器の鳴らし方もだんだん上手くなる
鳴らし方なんて本来自由なんですけどね。でも僕は楽器店で勤務していましたので、セールスの時にはメーカーやモデルごとに多少ピッキングのコントロールを変えていました。やっぱりそのギターを作った職人さんが本来狙っている音ッていうのがあると思うんです。それをしっかり鳴らせるようになると、大したことを弾かなくても聴いてる側はものすごい感動してくれるんです。
例えばGibson製アコースティック・ギターの名モデル、J-45は力強く打楽器を叩くように鳴らすと、バズーカ砲のように音が前に飛んでいくんです。正面で聴いているお客さんはその迫力に圧倒されます。でもMartin D-28は少し硬めのピックで1本1本丁寧に鳴らしてやるんです。すると空間を包み込むような暖かくて優しい音が鳴ってくれます。OASIS (オアシス)や斉藤 和義はモロにGibsonッて感じがしますが、James Taylor (ジェームス・テイラー)やTony Rice (トニー・ライス)はMartin系の弾き方。これは他のメーカーはもちろん、エレキギターにもクラシック・ギターにも通じる考え方です。
楽器店時代の僕は2-3年くらい経った頃から個人業績が目覚しく伸びたんですが (全店で月間1位になったことも)、単なる営業スキルだけでなくこーゆう細かい見せ方も影響していたと思います。こーゆうのも演奏スキルの1つだと僕は思っています。
ステージ慣れは5年くらい
パフォーマンスが上手い人ッて最初からなぜか上手いんですよね。人前に出ることに慣れてるというか、いつも楽しそうで、ちょっと気が利いてて、でも演奏中はものすごい集中力が高くて、気合の入った衣装でビジュがいいのはさることながら、数十分のステージで起承転結があったりして…。本来こーゆうのは目指してなるモノじゃないのかもしれないですけど、やればやるほどパフォーマンス力は向上するはず。5年…ていう数字に根拠はないですが、まぁ5年くらいやってみたらいいと思います。
大阪はバスキング (ストリート・ライブ)しているミュージシャンが結構多いですが、なぜか人が集まってる演奏ッてやっぱり言語化できない魅力がありますね。駅前でカラオケ披露してる若い女の子に群がってるのはお客さんではなく単なる養分のおじさんだと思いますが。
耳コピやアレンジはいつできるようになるか分からない
ギター歴10年ちょっとのアコギ弾き語りで活動されている生徒さんは、自分で耳コピして作った譜面を「採点して」と見せてきますが、毎回だいたい70点くらいです。その譜面を元にアレンジを色々考えはります。例えばイントロはソロギター風にして曲が始まったらアルペジオでしっとり、曲の後半はコード・ストロークでボリュームを上げて…など、自分のクリエイティビティを楽しんではります。もちろん全員がこうではないです。(それ言い出したら全部そやけど。)
僕の初めての耳コピは4歳の時でした。エレクトーンを習い始めたばかりの僕が、ドラマ『家なき子2』の主題歌だった中島 みゆきの”旅人のうた”のメロディを耳コピしてピアノで弾いていると、母と姉がえらく驚いていた風景を今でも覚えています。当時の僕は「次の音はこれくらい高いから、鍵盤で言うとこれくらい離れてそう」というインターバルをただ予測して弾いただけだったと思いますが、その想像力も耳コピをする上では結構大事かもしれません。
耳コピやアレンジが役に立つようになったのは仕事を始めてからです。例えば生徒さんが教えてくれた僕の知らない曲をレッスン中に一緒に聴いている時、僕が徐にギターを取り出して音源に合わせて弾き出すと、皆さん目を丸くして驚かれます。僕が初めて聴くにも関わらず、キメやブレイクまで完全にシンクロすると、ある生徒さんは「お金払いましょか?」とジョークを言ってくれました。(残念ながらジョークで終わりました。)
他にも、「この曲をソロギターで弾きたいのでアレンジしてください」という依頼が結構くるのですが、この時メロディをどこまでデフォルメして、どの音を残し、何のキーでどんなチューニングで弾くか、というのをすごく悩みます。でも数をこなしているうちに、「これは2カポのドロップD」と判断が速くなります。
こーゆうのがいつ、どのタイミングでできるようになるかなんて断言はできません。10年くらいでできるようになったら、早い方なんじゃないでしょうか。その10年間は、多分相当なインプット量が必要だと思いますが…。
ここまで色々書いてきましたが、「何年で上手くなりますか?」と聞かれた時の僕の本音は、「一生上手くなり続けます」です。だからといって全部の能力を極める必要はないです。僕だってレーダー・チャート (五角形)にしたらかなり歪な形になると思います。無理に鍛錬を上げすぎてイヤになるくらいなら、ゆるく長く続いた人の方が、最終的には圧倒的に上手くなります。ムキにならないこと、結果を急がないことが長く続ける秘訣です。
Midville’s
中村
