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「俺もそれ分かるようになりたい!」の話

ギター講師の中村です。
「俺もそれ分かるようになりたい!」の話。

 

ある生徒さんがレッスンで、四和音のコード (セブンス)やオンコード (分数コード)がたくさん入った楽曲を練習することになった。それまでメジャーやマイナーなどわかりやすいコードがメインで、できるだけコードの数が少ない楽曲を選んできたが、レベル的にもモチベーション的にも、少し刺激的な方が良いし”初めまして”のコードがたくさん入った曲をやる頃合いかな、ということで取り組み始めた。

この方の口癖は「厳しくせんといてな。褒められて伸びるタイプやから。」で、いつもレッスンは開口一番「前回までのはもう忘れた。また1から教えて〜。」だが、不真面目というワケでもなく、月3-4回のペースで通い続けていて、スイッチが入っている時は毎日練習しているらしく、そんな彼を奥さんも応援しているとのこと (素敵な夫婦)。なんやかんや1年以上継続していて、地道に上達している。

僕のレッスンでは講義ッぽくならないように「まず演る、その後説明」と言う順番をできるだけ心掛けている。まだできないことを説明されるよりも、今自分ができたことが何なのかを言語化した方が頭に入りやすい。だから実践から入るのが道理かな、と考える。それに生徒さんの多くは、教科書のような退屈で小難しい話など期待していない。なので、細かい話は後で説明するか、聞かれるまであれこれ言及しないのが筋。特に大人に対するレッスンはそんな感じ。

今回はいつもよりもコードの数が多く、セブンスやオンコードを多用した曲を選んだためか、珍しく「先生、お手本して。」と言うので、模範演奏をしたら、生徒さんは「う〜〜ん…。」としばらく考え出した。「なんか、ズレてない?」と言うのだ。僕のチューニングが狂っていたのか、と思ったけど、そうじゃなかった。「なんか、このコード進行、スッキリせえへんな。でも、成立してる。」「スッキリしないとは?」と聞くと「う〜〜ん…。」とまた考え出した。この時点で僕は、生徒さんが何に違和感をおぼえているのか分かったので、彼がそれを言語化するのを黙って待った。しばらくして「例えば、今までやってきたメジャーとかマイナーだけの曲だったら、ギター弾けへん俺の嫁はんが聞いても、合ってるか間違ってるか分かると思うねんや。でもこの曲をギターだけで聴くとなんか変な感じ。全然オンチとかじゃないねん、カッコイイねん。でもなんかスッキリせえへん…。」

 

分かる、分かりますよ…!!

 

この疑問は僕も10代の時に散々味わった。三和音以上の構成音の多いコードには言語化するのが難しい不思議な感覚を抱く (何も感じない人もいるけど)。多分そのことを生徒さんは話していたんだと思う。ただセブンスというものについてきちんと説明するにはあまりに色々な前提が抜けているので「サシ飲みはちょっと嫌やけど、AさんとBさんがおったら楽しく飲める距離感のお友達ッていてませんか?」と聞いてみた。「おおぉ、いてるいてる。」「その人がセブンスです。あなたと2人きりだと調和しないけど、別のいつメンがいれば独特の面白い飲み会になります。」

その後で、なんでズレてるのに成立しているのか?という話になったのだけど「今はまだこの和音 (飲み会)を”良い”と思う心がないだけです。でもいつかこれに慣れて”良い”と思えるようになった頃、また違う音楽の聴き方や楽しみ方があると思います。」と偉そうに言ってみた。続けて「例えばアイラ系のくっさいウイスキーを好む人ッて、最初っからくっさいのが好きだったワケではないでしょう。初めて飲んだ時にはほとんどの人が不味いッて感じたんじゃないすかね。でも『いつかこれを分かるようになりたい!』ッていう感情が湧いたら、そこが”愛好家の入口”じゃないですか。」この説明できっと伝わったと思う。「おん、俺もそーゆうのが分かるようになりたいわ!」

 

“分からないこと”に出くわした時、考えることは大事だ。そんな時は僕も「分かるようになりたい」といつでも思える大人になりたい。

 

Midville’s
中村

音楽講師 / ビートメイカー

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