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絶対音感は身につけるべきか?

ギター講師の中村です。
今回は絶対音感についてお話しします。

絶対音感にまつわる誤解

先に言っておきますが、絶対音感は魔法の能力ではありません。結構夢壊すことを今からたくさん言うかもです。

音楽家は絶対音感がないと仕事ができないというような特殊性もありませんし、当然これがあれば優れた音楽家になれるワケでもありません。絶対音感を持っていることがかえってマイナスに機能している人も少なからずいます。稀に生まれつきの才能だと言い張る人がいますが、生まれつき絶対音感を持っている人はほぼいないそうです。臨界期までに訓練を受けたことを、物心がついて忘れているだけ。

 

要するに絶対音感と音楽の才能は関係がないのです。

 

例えるなら「私は1杯のコーヒーだけで (比較なしで)産地を当てることができる。」と言っているオッサンが、良いコーヒーショップの経営者になれるでしょうか。そうとは限りません。比較して (相対的に)良さを見出すことが出来る人の方がコーヒーそのものに詳しいでしょうし、ききコーヒーが上手いことと良い経営者になることは全然別の能力ですよね。

音楽教室なんかやってますと、我が子に絶対音感を身に付けさせたがる親御さんをよく見かけます。日本 (を含め東アジア諸国)は絶対音感保有者が多いのです。もちろん絶対音感は耳コピしたり、曲をたくさん正確に覚えたりするにはとても良いスキルですので、否定はしません。ただあまりにも神格化されているような気もします。絶対音感そのものは音楽のほんの一部の力でしかありません。大人になって音楽を辞めてしまったらその能力が役に立つ場面ほとんどないですし…。むしろ多少なりとも生きにくくなるかと。

絶対音感は物心が付く前しか訓練できませんので、望んで身に付ける子はほとんどいてません。相対音感が身に付きにくくなるというデメリットもあるので、それが本当にその子にとって必要かどうか吟味する必要があると思います。表層的な親のプライドのためだけに子供に音感の訓練するんじゃなく、”音楽”をちゃんと教えてあげた方が子供は豊かに育つと思います。

相対音感

講師目線で言うと、ピアノみたいな絶対音を弾く楽器でなければむしろ”身に付けなくていい”という認識が一般的じゃないでしょうか。ギターの先生で”絶対音感は必要だ”と言っている人もほぼゼロ。少なくとも僕は出会ったことないです。ギターは絶対音を弾くための楽器ではないし、”移動ド”と言って「ドレミファソラシ」を音名ではなく階名としてとらえる考え方があるので、”ド”は絶対に”ド”!と言う覚え方をしてしまうと”ド”を”ファ#”として考えなければいけなくなった時にちょっと苦戦するかもしれません。

ちなみに絶対音感の臨界期は大体5-6歳頃まで。それ以降でも身に付くことはありますが可能性は1割未満と低いです。子供のうちじゃないと絶対音感が身に付かない理由は”比較して答えを導く能力が子供の方が低いから“という非常にシンプルなもの。要は複数の情報を処理し、それを根拠に断定していく考え方が身に付く前に、これはドでこれはラと教えていくのが絶対音感です。ある2音を聴いて、それがどのように調和しているか、その調ではどのような役割を持っていて別の調ではどのように機能するかなど、音を多角的にとらえることを相対音感と言います。これは大人でも鍛えることができます。

実際、僕は絶対音感保有者ではありませんが、いつもギターのチューニングを5弦から行うので、110Hzもしくは440HzのA音 (ラの音)をある程度の精度で当てることができます。天気の悪い日や寝不足の日は全然当たりませんが…。今アプリのチューナーでラの音を声で出してみたら、やっぱりそこそこの精度で当たりました。今日は調子の良い日のようです。

ギターをある程度弾いていると開放弦の音程はある程度覚えると思います。どんなに周囲が雑音だらけでも、ギター本体から伝わる振動で当たることもありますから、音程を聴いている、というよりもむしろ周波数を感じているという感覚かもしれません。

いずれにしても楽器を触っていれば、ピタリと当てられはしなくても、ズレていたら「おかしいな?」と思うくらいには音感は身に付くと思います。これも相対音感の一種です。

絶対音感は言語習得に役に立つのか?

僕は1人の指導者として、絶対音感は身に付けなくても良いという立場に立っています。僕が主宰する音楽教室としては”音楽に必要なあらゆる能力”と”演奏をする上で必要な能力”を有機的につなげていくことの方がよっぽど大事だと考えているからです。

絶対音感を身に付けるメリットとしてよく語られることの1つに「言語習得が早い」という記事をよく見かけます。絶対音感の臨界期は6歳頃となっており、これは母語 (第一言語)の確立の時期とほぼ重なっています。また絶対音感も母語も一度習得するとなかなか忘れにくいと言う点で似ています。このことから、絶対音感の訓練を受けている子供は他言語の習得も早いと言われたのだと思います。これはあくまでネットの情報です。根拠は不明です。信じるか信じないかは…ッてやつですね。

僕が読んだいくつかの文献ではそんなことどこにも書かれてませんでした。むしろ「絶対音感だから言語取得が早い」のではなく「日本語や中国語など東アジア諸国の言語が絶対音感の習得に都合が良い」という話があったくらいで。ネットの記事は虚実入り混じってて僕はあまり信用していないです (まぁこの記事もネットだけど…)。

 

今日は絶対音感の神話を崩してしまいましたが、これは多くの人が誤解していることの1つをただ説明したに過ぎません。

 

Midville’s
中村

音楽講師 / ビートメイカー

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