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並行輸入品は買わない方がいい

ギター講師の中村です。
今回は並行輸入の楽器についてお話しします。

並行輸入品とは?

端的に言うと「正規品でないもの」は全て並行輸入品です。

正規品を定義すると、海外のメーカーから”正規輸入代理店”のオーソリティ (販売権)を受けている仲介業者が卸している商品のことです。それ以外のものは仕入れ元が不透明ということで、モノによってはフェイクも混ざっている可能性があるため「並行輸入品」と呼ばれます。

例えば東京の山野楽器はアメリカのTaylor (テイラー)というギターメーカーの正規輸入代理店をしています。山野楽器はTaylor本社から送られてきた楽器を日本全国の楽器店に卸しています。これが正規品です。よく「楽器は楽器店で買った方がいい」と言われる理由は、正規品だからというのが大きいと思います。

また正規輸入代理店は入荷したギターを1本1本丁寧に点検し、よくない個体を日本に流通させないようにする機能もあります (日本の企業は検品が細かい)。並行輸入品を扱うショップがそこまで時間と人件費をかけてやっているかどうか…、やってたとしてもどこまで専門的な見立てができているかは謎です。

並行輸入品は安いけど...

正規品かどうかは代理店がシリアルナンバーを照合すれば分かるようになっています。

並行輸入品は正規品に比べるといくらか安いですが、修理やメンテナンスにおいては公式のサポートが受けられないので、新品の楽器を買う場合には並行輸入品は選ばない方が賢明です。(中古なら正規も並行も関係ない。)

理由としては、並行輸入品には正規保証がありません。ネックが反っただのフレット擦り合わせだの、一般的な修理なら有償でどこでもやってくれるでしょうけど、そのモデルにしか使われていない専用のパーツ交換が必要になった場合には正規品じゃないとちょっと面倒です (最近の海外メーカーは、専用パーツが多くなってきているような気がします)。 山野楽器が輸入するTaylorギターは、「並行輸入品は受け付けない」と明言しています。Taylorは作りもパーツもちょっと変わってるんで、山野さんの修理が受けられないのは結構キツいですね。

もしかすれば並行輸入品を販売してる店が半年や1年の間、保証してくれる場合はあるかもしれませんが…ただそーゆうショップは長く商売しません。多くは数年以内に淘汰されるため、保証が切れる前に店がなくなってしまいます。

どうして出回る?

海外のメーカーは日本の会社 (輸入代理店)との間に契約があります。

ところが日本のブローカーが海外の業者から安く新品やデッドストックを仕入れて、日本国内のどこかの通販業者に横流ししたり、自分でECサイトを立ち上げて流通させることは理屈上可能です。それによって出回っています。これは対策してもまた新たに誰かがやるので、結局ラチが明かないのです。

これを「直輸入」と称して大々的に価格破壊を引き起こしていた楽器系通販サイトがあります。あたかもメーカーから直接買っているように匂わせていますが、実際のところ仕入れルートは明らかにされていません。それではB品やフェイクが混ざっている可能性が捨てきれないのです。近年では総合通販サイトで海外メーカーの弦のニセモノが出回っていることが見つかり、物議を醸しました。(これがまた精巧にできてる…!)

楽器本体のフェイクは今のところあまり聞いたことがありませんけどね (あるけどフェイク品を面白がる体質もあるので一概に害悪とは言えない…)。

手放すまで気を抜くな

並行輸入の安い海外ギターを購入し、本物だと思って使っていたが、それを手放そうと思って楽器屋さんに持ち込んだら査定中にニセモノだと診断された、という例があります。僕が楽器屋さんで働いてた5年間で少なくとも2回はありましたので、多分実際にはもっとあるんでしょう。オーナーにとってこれほどガッカリなことはありませんね。やはり話を聞いてみると、ネットオークションで買ったとか、通販サイトで安かったから買ったとか、そーゆう感じでした。オークションサイトなどの多くは素人が見立てて、素人が値付けしたものなので、値段の割にリスクが高いです。

ちゃんとしたお店で売ってる中古楽器に間違いが少ないのは、やっぱりきちんと査定した上で、受け取ったらすぐ弾ける状態で販売されているからに他なりません。日本はリアルショップ主義で世界から遅れてると言われていますが、それはネットの治安が悪いことの裏返しでもあると思います

並行輸入品は減少傾向に

日本の代理店も現地メーカーもノロマではありませんから、並行輸入品の流通をそう簡単に許容しません。当然ながらあの手この手で対策を打っています。例えば保証内容をアップグレードして価格もできるだけ近づけて、とにかく正規品の付加価値を強調します。あるメーカーは「日本の〇〇というサイトでギターを買うな」と名指しで喧伝するキャンペーンを行なったりしていてなかなか勇ましい対応をしていました (逆に宣伝にならんか…?)。

楽器業界が育ててきた市場を素人でもできる”ただ安いだけ”のビジネスに移行されるのはまぁ面白くないでしょうね。そのままいくと日本の音楽人口が衰退しかねないという懸念もありますからな。まぁ個人的には、プロ意識の低い事業者は放っといても自滅するし好きにさせとったらええんとちゃいますか…と思ってしまいますが。

業界の努力の甲斐あり、最近は少しずつ減っています。多くの並行輸入の販売業者が2-3年以内にはほぼ駆逐されてると思います。

並行輸入品には安いというメリットはありますが、僕の方から積極的に買うことをオススメしたいとは思いません。

 

Midville’s
中村

音楽講師 / ビートメイカー

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