元・楽器店員が忠告!安い並行輸入品の落とし穴とリスク

ギター講師の中村です。
時に皆さん、楽器を買うときは、少しでも安いほうがいいですよね。色んなショップを見回って値段を比較したり、値切り交渉してみたり、状態のいい中古品が出回るのを待ってみたり。

実は海外ブランドのギターを安く買う方法として、「並行輸入品を狙う」というのがあります。並行輸入品は平均して正規品より2-3割ほど安い傾向があり、人気があります。

しかし、そこには大きな落とし穴があるということをお忘れなく。元・楽器店員の中村が、徹底解説します。

目次

    並行輸入品とは何か?

    並行輸入品とは端的に言うと「正規品でないもの」です。

    では逆に正規品とは何かを定義すると、海外のメーカーから”正規輸入代理店”の販売権を持つ仲介業者が卸している商品のことです。ちょっとややこしいですね。

    例えばある海外メーカーA社が日本でギターを売りたい場合、一般的には日本企業B社を仲介業者としてオーソリティ (販売権)を与えて、日本国内ではB社がA社の代わりに商品管理や保証サービスを請け負うというのが正規品の流通経路です。

    正規品以外のものを並行輸入品と言います。お酒の世界では並行輸入品というとそこまで悪いイメージはありませんが、ギター業界では基本的に仕入れ元が不透明なものはやや敬遠される傾向があります。モノによってはフェイクも混ざっている可能性があります

    まとめますと

    • 正規品: 海外メーカー ➔ 正規輸入代理店 (日本企業) ➔ 楽器店 ➔ ユーザー (手厚い保証あり)
    • 並行輸入品: 海外メーカー ➔ 海外の業者 ➔ ブローカー ➔ 国内の通販サイト ➔ ユーザー (公式保証なし・偽物のリスクあり)

    です

    並行輸入品は安い以外のメリットありません

    並行輸入品は正規品に比べるといくらか安いですが、修理やメンテナンスにおいては公式のサポートが受けられないので、新品の楽器を買う場合には並行輸入品は選ばない方が賢明です。(中古なら正規も並行も関係ないです。)

    理由としては、並行輸入品には正規保証がありません。最近はギターメーカーも様々な工法、作りをしていますから、そのモデルにしか使われていない専用のパーツ交換が必要になった場合には並行輸入品ユーザーはサポートを受けられないか、もしくは正規品よりも高額な修理代金を支払ってサポートを受けます。

    例えば2021年現在、Taylorの輸入代理店を務める山野楽器は、「並行輸入品の修理は受け付けません」と明言しています。Taylorは作りもパーツもちょっと独特で汎用品が使えませんので、山野楽器の修理サポートが受けられないのは結構キツいですね。

    もちろん並行輸入品には並行輸入品を販売してる店の保証がつく場合があります。ただそーゆうショップはサステナビリティに欠けており、息の長い商売はしません。「独自のルートで仕入れています」と謳っているディーラーは平均数年以内に淘汰されており、保証が切れる前にビジネスが破綻します。

    メーカーや正規代理店からすれば価格破壊を起こす並行輸入業者は商品の信用度を下げる”害悪”でしかないのですが、並行輸入ビジネスは違法ではありませんので法的に潰すということができません。そこでメーカーや正規代理店はサービスをより充実させることで顧客を囲い込みます。結果として安い以外取り柄のない並行輸入業社は潰されていくのです。

    どうして出回る?

    海外のメーカーは日本の会社 (輸入代理店)との間で、「月にどのモデルをどれだけ販売するか」「年に何ドルの仕入れをするか」「どのようにプロモーションするか」などの契約を交わします。

    ところが楽器業界にも”ブローカー”の存在があり、海外の業者から安く新品やデッドストックを仕入れて、日本国内のどこかの通販業者に横流ししたり、自分でECサイトを立ち上げて流通させることで出回っています。これは対策してもまた新たに誰かがやるので、イタチごっこになりますが、先ほども書いた通り「正規品の価値を高める」というやり方で淘汰していきます。

    稀に「並行輸入品」を「直輸入」と表記して大々的に価格破壊を引き起こしている楽器系通販サイトがあります。あたかもメーカーから直接買っているように匂わせていますが、実際のところ仕入れルートは明らかにされていませんし、それが安定して在庫供給できるルートかどうかは謎です。B級品やフェイクが混ざっている可能性も捨てきれません。

    ある中国人のお客さんは、「楽器は日本でしか買わない」と豪語していました。理由を訊ねると「日本のショップならまずニセモノは見ない、中国では普通の店でもニセモノがありますので」と仰せでした。しかし近年、某総合通販サイトで海外メーカーのニセモノが出回っていることが見つかり、物議を醸しました。日本の消費者の中には「どれどれ、ニセモノはどんなもんや」と、面白がって買う人もいたそうです。

    手放すまで気を抜くな

    まぁ滅多にない話ではありますが、並行輸入の安い海外ギターを購入し、本物だと思って使っていたが、それを手放そうと思って楽器屋さんに持ち込んだら査定中にニセモノだと診断された、という例があります。僕が楽器屋さんで働いてた5年間で少なくとも2回はありましたので、多分実際にはもっとあるんでしょう。オーナーにとってこれほどガッカリなことはありませんね。やはり話を聞いてみると、ネットオークションで買ったとか、通販サイトで安かったから買ったとか、そーゆう感じでした。

    この記事でも少し触れましたが、オークションサイトやフリマアプリに商品を載せる人のほとんどは素人見立てで、素人の値付けです。これはリスクが高いです。

    ちゃんとしたお店で売ってる中古楽器に間違いが少ないのは、やっぱりきちんと査定した上で、受け取ったらすぐ弾ける状態で販売されているからに他なりません。日本は実店舗ビジネスが強く、これは世界から遅れてると言われています。しかしそれはネットの治安が悪いことの裏返しでもあると思います

    並行輸入品は減少傾向に

    日本の正規代理店も現地メーカーもノロマではありませんから、並行輸入品の流通をそう簡単に許容しません。当然ながらあの手この手で対策を打っています。ある海外メーカーは「日本の〇〇というサイトでウチの商品を絶対に買うな」と名指しで喧伝するキャンペーンを行なったりしていてなかなか勇ましい対応をしていました (逆に宣伝にならんか…?)。※数年以内にそのサイトも消えてます。

    楽器業界が育ててきた市場を素人でもできる”ただ安いだけ”のビジネスに移行されるのは、まぁ面白くないでしょうね。そのままいくと日本の音楽人口が衰退しかねないという懸念もありますからな。

    業界の努力の甲斐あり、最近は並行輸入業社は少しずつ減っています。多くの業者が2-3年以内にはほぼ駆逐されてると思います。

    僕も事業者なのでよく分かりますが、並行輸入業社なんて放っといたらええと思います。その低っくいプロ意識で5年でも持ち堪えてる業社がどれだけあるか知りませんが、「安い」という理由で集まってくる質の悪い客だけ相手させておけば、真っ当に商売してるディーラーはハズレ客引かんでいいですからね。必要なくなったら市場淘汰されて終わりですよ。遅かれ早かれ、辞めちゃう人にかまってる時間はもったいないです。

    安いというのはとても魅力的ですが、僕の方から積極的に買うことをオススメしたいとは思いません。

    あ、Midville’sでは不要になった楽器の買取や委託販売も行っております。並行輸入品でもOKですのでお気軽にお問い合わせください。

    Midville’s
    中村