考える音楽講師Book Of Days -音楽書籍紹介-『ヤクザときどきピアノ』 著: 鈴木 智彦 <CCC MEDIA HOUSE>

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『ヤクザときどきピアノ』 著: 鈴木 智彦 <CCC MEDIA HOUSE>

講師の中村です。
新コーナー、Book Of Days (ブック・オブ・デイズ)始めます。オススメの音楽関連書籍を紹介していきます。タイトルはアイルランドの歌手Enya (エンヤ)の名作『Book Of Days』から取りました。

これまで読んだ本の中から面白かった (且つ読みやすい)本のレビュー記事みたいな感じです。本て良いですよ。知識は荷物になりませんし、お若い方は目が悪くなってしまう前にたくさん読んだ方がいいと思います。とはいえ、ここで紹介するのは専門的な本ではなく、もっと読みやすいものをチョイスしていく予定ですが

BGMが欲しい方はEnyaの『Book Of Days』を聴きながらどうぞ。

Book Of Days #1 は『ヤクザときどきピアノ』 著: 鈴木 智彦 <CCC MEDIA HOUSE>。

普段はヤクザ系のルポライターをしている50代男性の著者が、突然ABBA (アバ)の『Dancing Queen (ダンシング・クイーン)』に感動して「この曲をピアノで弾きたい!」という衝動に駆られてピアノ教室に通い出すという実体験に基づくエッセイ。ドレミも分からずに入会し、”レイコ先生”による丁寧な指導を受け、レッスンを通じて色々な気づきを体験していく過程を、コミカルに表現していてとっても読みやすいです。

大人になってから楽器を始めた人の中には、彼の体験に共感する方もきっといらっしゃるでしょう。とにかく、最初から最後まで笑える本です。

この鈴木さんを指導したレイコ先生がどんな方なのか、風貌や年齢、パーソナリティについての描写はほとんどありませんが、登場人物が基本的にこの2人なので、2人の会話から良い先生であることは間違いなく伝わってきます。それが証拠に、レッスン中に放つ言葉が名言だらけなんです。いくつか抜粋します。


「音楽は誰もが生まれながらに喋れる言語なの。」
「何年レッスンを受ければ上手に弾けますか?なんて、正直、意味のない質問ね。人はそれぞれ違うと説明するのも馬鹿らしいし、上手に弾けるというのがどんな状態かもわからない。(中略) 人間はいったん思い込むと、無意識のうち、そうなるように行動しちゃうのよ」
「そんなに根を詰めなくてもいいのよ。あとはピアノが教えてくれるから」
「できない部分はそこだけを抽出して練習すること。何度も同じ場所を間違えていると、沼にはまって抜け出せない。指が、脳が、間違いを記憶してしまうわけ。」
「弾ける人は練習をしたの。難しい話じゃない。」
「無理やり弾かされていると感じたら、もう駄目なんです。 (中略) 鈴木さんが強く『弾きたい』と思うこと。」
「シニアのみなさんは緊張しすぎて、なんというか悲壮な感じで、わかりやすくいうと…….お通夜ね」

鈴木さん本人の気づきや、音楽に対する敬意も最後まで素敵な一冊です。

 

Midville’s
中村

音楽講師 / ビートメイカー

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