
[レッスン] ブルースを弾こう!
講師の中村です。
今回はテキストレッスン「ブルースを弾こう!」です。
ブルースは19世紀後半のアメリカ合衆国に生まれた音楽ジャンルの1つで、当時肉体労働に従事していた南部のアフリカ系アメリカ人たちの労働歌や掛け声から派生しました。日常的な感情、特に憂鬱なことや不幸なこと、また差別への反発など、自分たちの貧困や苦難などを”ブルーなこと”を即興で歌い合うことからブルースと呼ばれています。 (実際の発音はブルーズなんですけどね。)

ミシシッピ州のデルタ地帯では、そんなブルーな出来事をギターを弾きながら即興で”ぼやく”パフォーマンスが成立し、後にデルタ・ブルースと呼ばれます。冒頭に貼った音源のようなスタイルですね。
デルタ・ブルースが発展して現在我々が聴いているロックの基礎になり、ひいてはポップスにつながっていきます。つまり大衆音楽のルーツを辿っていくと、多くのジャンルがブルースに繋がっていると考えられます。
デルタ・ブルースはどの曲も似たようなキー、似たような構成、似たような節ですので、戦前のブルースマンの音楽を聴くとどれも同じに聴こえますが、当時はそういった”型”をみんなが共有していたということです。今回はその基本的な型を習っていきましょう。
ブルースはとてもシンプル
基本的には3コードで弾けます。しかも1コーラスたったの12小節。色んなキーで弾くことができますが、ギターではEで弾くことが多い (?)かと思います。AとかCもあるけど。今回はEで。

ブルースのジャンルにおいては、ほどんどのコードは”ドミナント・セブンス”を指します。例えば”E”と書かれてあったら、言われなくても”E7”を弾きます。間違ってもメジャー・セブンス (M7、maj7、△7など)は弾かないように。ドミナント・セブンス (いわゆる普通のセブンス)です。
まぁ、この譜面の通りに4ビートで弾くだけでも十分ですが、せっかくですからもうちょっとブルース感を出していきましょう。記事の冒頭に貼った音源『Sweet Home Chicago (スウィート・ホーム・シカゴ)』のテイストに近づけます。

ブルース特有の一般的な伴奏型です。
“ディグリー”で見るブルース
キーをEとした場合のダイアトニック・コードは下記です。ダイアトニック・コードは簡単にいうと「そのキーにおいて使用されうる主要なコード7つ」です。その1つ目から7つ目までにローマ数字で番号を振ります (音符の下に書いてます)。この番号が”ディグリー・ネーム”です。Eブルースで使われている3コード (E、A、B)はそれぞれI、IV、Vであることがわかります。

そして、ブルースをディグリー・ネームで見るとこんな感じなんです。

ということは、キーが変わってもI、IV、Vのコードを探し出してこの譜面に代入すれば、キーを変えて自由に演奏できます。ダイアトニック・コード一覧はググればすぐに出てくるので、別のキーで弾く練習もできます。

例えばウクレレの場合はキーがCかGだと弾きやすいと思うので、上の一覧からCもしくはGの欄を見て、そこからI、IV、V (オレンジのところ)の3コードを拾い上げて弾けばいいのです (難しい?最初だけ、最初だけ)。もちろん、「言われなくても」セブンスで弾いてくださいね。

ターン・アラウンドを学ぼう
ブルースでは最後の2小節を”ターン・アラウンド”もしくは”ターン・バック”と言います。

この譜面では最後のコードがB7、ディグリー・ネームで言うと「V」で終わっています。これをそのまま弾いても、きっと多くの人が「なんか中途半端な終わり方だな」と感じるでしょう。ですが最後の「B7 (V)」の後に、試しに「E7 (I)」を弾いてみると、「ちゃんと終わった!」という感じがするはずです。これは感覚的なものなんですが、一般的に「V」のコードは”不安定”、「I」のコードは”絶対安定”というキャラクターを持っていて、「V→I」の動きをすると「不安定→絶対安定」になるため、曲中でそーゆう動きをすることが多いです。
最後の小節の「V」の後、「I」を弾いて曲を終えてもいいのですが、曲の頭も「I」なので、最初に戻って繰り返してもOKです。セッションの場では1周して終わりッてことはないと思うんで、繰り返し弾けるように最後の2小節をもう少し和声的に面白くしていきたいと思います。

1コード挟むだけでちょっとしたスパイスになりました。これをディグリーで表してみるとI – II – Vになっています。これをさらにいじっていきます。

これは最も標準的なターン・アラウンドのコード進行です。ディグリー・ネームから「I – VI – II – V (イチロクニーゴー)」などと呼ばれています。
3コードじゃ物足りないですからね、最後の2小節をこんな風にアレンジしてみてもいいと思います。
ブルースを弾こう!
先ほどやった「I – VI – II -V (イチロクニーゴー)」のターン・アラウンドを実際に弾いてみましょう。

譜面には指示がありませんが、曲を終える時は「E7 (I)」をジャーンと弾けば終われますので、それで終わるように。
ウクレレ用はこちら。

こちらも同様にキーはCですので終わりのコードはC7です。
ブルースを聴こう!
聴くのもまた学び、ということで、最後に色んな曲を聴いていきたいと思います。
戦後になってアフリカ系労働者がアメリカ中のあらゆる地域に移動できるようになったことで、各地の音楽と融合し、戦後の大衆音楽に大きな影響を与えていきます。例えばこんな曲。
Chuck Berry (チャック・ベリー) / 『Johnny B. Goode (ジョニー・ビー・グッド)』
1950年代になるとChuck BerryやElvis Presley (エルヴィス・プレスリー)、Eddie Cochran (エディ・コクラン)が登場してロックンロールと言われる音楽が台頭します。3コードで弾けて1コーラス12小節である点などが全く同じなんですよね。日本でもCarol (キャロル)や横浜銀蝿などがこの系譜上にいるんですが、とにかくノリがよくて弾いてて楽しい。
Derek & The Dominos (デレク・アンド・ザ・ドミノス) / 『It’s Too Late (イッツ・トゥ・レイト)』
1960年代からはJimi Hendrix (ジミ・ヘンドリクス)やRoy Buchanan (ロイ・ブキャナン)など、エレキギターを全面に出したブルース・ロックのミュージシャンが登場し、僕やちょっと上の世代にとってのギターヒーローたちがこの時代に活躍しました。このDerek & The Dominosは活動期間は2年ほどと短いですが『Layla (レイラ)』や『Bell Bottom Blues (ベル・ボトム・ブルース)』などのブルースロックの定番曲を生み出したことで伝説化されてるバンドです。
The Meters (ザ・ミーターズ) / 『Cissy Strut (シシー・ストラト)』
1970年代になってファンクと融合し始めたブルースは、コードや小節の型が破られより自由な音楽に転生していきます。この曲はセッションの定番としても知られていて、コードはなんとずっとC7一発。ワンコード。この曲にブルースの血が流れているかどうかは人によって意見がバラけると思いますが、どうやっても消せない”セブンス”の泥臭さが僕にはブルージーなものに聞こえます。
こうしてブルースは徐々に基本から外れて、モダンなスタイルへと変質していきます。日本にも憂歌団やウエスト・ロード・ブルース・バンド、静沢 真紀などコッテコテのブルースマン/ウーマンがいますが、もう少しポップス寄りのジャパニーズ・ブルースもオススメで。僕はT字路s (ティージロズ)がすごい好きですが、Rei (レイ)のような若手アーティストもよく聴いてます。
シブすぎや。
最後に僕のお気に入りの”ブルース・ブラザーズ”の動画貼っときます。
さて、今日はターン・アラウンドやらディグリー・ネームやら新しい知識がたくさん出てきました。こーゆう用語も大事ですが、もっと大事なのは「理解した上で弾けること」です。
Midville’s
中村
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中村
音楽講師 / ビートメイカー
“Finger Pickers Took Over The World” (Chet Atkins with Tommy Emmanuel)
ある師弟ギタリストのコラボ作品
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