
“Secrets” (Sierra Hull)
講師の中村です。
My Favorite Things #10。マンドリンの名手、Sierra Hull (シエラ・ハル)のご紹介。
今回紹介するのはカリスマJK、Sierra Hull (シエラ・ハル)。フラットマンドリンの名手です。歌声も良いし演奏力も抜群で、ギターも弾けるマルチプレイヤーです。このアルバムは2008年のデビュー作で、当時まだ田舎の高校生でしたが、ブルーグラスの世界ではこの時から高い注目が集まっていました。
日本ではあまり馴染みない音楽かもしれませんが、ギターの街テネシー州ナッシュビルを中心に非常に盛んに演奏されているジャンルです。ここには相当レベルの高い在野のプレイヤーがウジャウジャいるそうです (怖い)。

彼女が持っているフラットマンドリンという楽器について少し触れてみます。フラットマンドリンは、ヨーロッパのクラシックマンドリンを立ったまま弾けるように改良された楽器で、ほぼブルーグラスを演奏するためだけに存在しているようなモノです。それゆえ生産もユーザーもアメリカに集中しています。
ブルーグラスの演奏は基本的にギター、バンジョー、フィドル(=バイオリン)、マンドリン、コントラバスの5人で構成されていて、アップテンポな伴奏で歌いながらフルピッキングのアドリブソロを回したりする音楽です。
ライブやレコーディングは1本のコンデンサーマイクを5人で囲むようにして行います。(下の写真みたいに)

実は日本でも有名な大学の一部には「ブルーグラス同好会」などが存在していたり、各地でイベントが催されるなど、コアなファンが一定数存在しています。最近ではジャズやブルースの要素を混ぜたり、シンセの音を足したニューグラスなんていうジャンルに派生していていますね。
話をSierra Hullに戻しますが、彼女のこのデビュー作”Secrets”はニューグラスのような混ぜ物ではなく全編古式ゆかしきブルーグラススタイルになっています。その後もファンは増えるわ大手メーカーからのエンドースメント(機材提供される代わりに広告塔になる)を受けるわで、古式ゆかしきブルーグラスからも離れて少しポップ路線になったり、アイドルのようなブランディングをする動きも目立ちますが、それでも相変わらず腕は良いのでもう最高です。
プライベートでは同業者のブルーグラスギター/バンジョー/マンドリン奏者のJustin Moses (ジャスティン・モーゼス)と結婚し、ナッシュビルで音楽漬けの日々を過ごしているとか。これからもっともっと活躍してほしいです。

オススメ曲①
アルバムにはインスト曲が2つ入ってますが、そのうちの1つ、 M10『Hillarious (ヒラリアス)』はマジで衝撃的でした。参加している他の楽器奏者も全員上手すぎるし、音質もめっちゃ良くて。アドレナリン漏れっぱなしでした。
オススメ曲②
こちらは歌モノです。M11『Absence Makes The Heart Grow Fonder (アブセンス・メイクス・ザ・ハート・グロウ・フォンダー)』という古い歌のカバーです。イギリスのことわざで「会えない時間が愛を育む」と言うそうです。オリジナルはLou Reid (ルー・リード)。音楽自体はとっても陽気ですが歌詞では「会えない時間が愛を育むなんてウソだ!」と言っています。
Midville’s
中村
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中村
音楽講師 / ビートメイカー
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