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練習とは何か?

ギター講師の中村です。
“練習”について。

ところで一部の生徒さんたちにとってはもう歯磨きや食事と同じレベルで習慣になっている「すみません、全く練習できてません」と言うワードを聞いて、練習の仕方が分からない人もいるのではないか?ということをふと思いましたので、今回の記事では”練習”に対してあれこれ言及してまいります。

練習は量より質

「1日何時間練習すれば良いですか?」と聞かれることがありますが、…なんというか、この質問はあまり芯を食ってないのでお答えしてもきっと為にならないかと思います。

よく言われることですが、ある技術をマスターするには最低10,000時間必要だとのことです。「10,000時間の法則」とか言われるやつですね、えらい膨大ですよね。これは1日5時間の練習なら5年半、1日3時間の練習なら9年3ヶ月、1日30分の練習なら54年10ヶ月かかる計算になります。ただこれをこなしたとてその技術を得たことになるかは分かりません、いや、ならない可能性の方が高いと思います (相当な自信にはなるでしょうけども)。

この10,000時間の法則は元々「音楽やスポーツの専門家たちのある期間の”意図的な練習量 (=適切な方法で行う練習量)”を計測し、それを数年単位でスケールしたら最低10,000時間という数字が出た。」と書かれた論文をポップに (余計な)アレンジをして広まった”誤解”に近いです。練習には量の他に質を気にしなければなりませんので。むしろ量より質の方が重要だと思います。

反復練習は悪か?

反復練習は、最もカロリーを使わない練習方法の1つです。何も考えていなくてもいずれは1曲を通して弾けるようになるからです。

ただこれには①途中で指遣いや構成を変えることに対処しにくい②一度演奏が止まると途中から再開することが難しくなる③前半だけやたら上手くなりすぎるという欠点があります。①に関してはレッスンのパフォーマンスを大きく下げることにつながりますし、②と③に関してはもうそれは”音楽”と言っていいのかも怪しいです。(ま、本人がそれで良いのならば余計な口出しはしませんが…。)

そしてこの練習方法に頼りすぎると「上達しにくい」という最悪の欠点もあります。”反復によって体で覚えた曲”はなんとか弾けるようになるかもしれませんが、楽器そのものが上達しているか?と言えばそれは微妙です。上達というのは、他の曲を演奏した時に初めて実感することだったりもします。要するに反復だけでは、他で活かせるスキルが身に付きにくいのです。それにせっかく覚えた曲も、時間が経って忘れてしまえば無になってしまいますから、結局何も残らないのです。ギターでは譜面を読まない人、ドレミを意識しない人が特に多いので、きちんと譜面の情報を頭でイメージして弾くという挙動が重要です。

ただし”部位鍛錬”をする場合には非常に効果的であると言えます。どうしても躓く場所がある場合は、とりあえずその部分だけ20回反復、ダメなら50回。それでもダメならまた明日、明日もダメならまた次回。3ヶ月後くらいに少しマシになっていたら良いなぁ、それくらい気長に構えといてください。部位鍛錬は必ずその前後を含めて練習すると良いです。

練習の目的

練習の目的は端的に言って「自分を客観視すること」じゃないでしょうか。上達はその先にあるものだと考えます。

良くも悪くも、自分の演奏は自分自身を具現していると思うのです。自信がない人は声量も音量も小さいし、大雑把な人は細かいところを雑に演奏をするし (はい、これ僕です)。なので演奏すると同時に自分を俯瞰で見て、ツッコミを入れ続ける作業が必要です。そのツッコミに対して正当な理由がないものは、改善していきます。要するに「口うるさい神経質なもう一人の自分」を頭の中に飼えと。そうすることで少し視野が広がりますよ、というお話です。

口うるさい神経質なもう一人の中村「おいそこ、付点八分だろう?二拍三連に聞こえるぞ。」
実際の中村「はい、すみません、間違えました。以後気をつけます。」
口うるさい神経質なもう一人の中村「なんか今の和音変じゃなかったか?」
実際の中村「でも楽譜にそう書いてますです。」
口うるさい神経質なもう一人の中村「ダメだ。変えた方が良い。修正しろ。」
実際の中村「はい、承知しました。」
口うるさい神経質なもう一人の中村「待て待て、そんな大きな繰り返しを全く同じように弾いていいのか…?」
実際の中村「そうですね、2回目はちょっとボリューム下げ気味の方がお客さんの集中力高まるかもしれませんね。」
口うるさい神経質なもう一人の中村「あとそこ、キュッて音鳴らすな。ボリューム下げるんだったらそのノイズかえって目立つぞ。」
実際の中村「はい、練習不足です、すみません。」

 

こんなことばっかり。

録音をしよう

客観視をもっと簡単に行うには、練習を録音して後で聞き返すと良いです。リズムがブレていないか、後半につれて速くなったりしていないか、歌う人であれば音程が外れていないか…など、厳しめにチェックしていきます。それでそれぞれの課題の炙り出しをすることが練習です。解決しないことをレッスンに持ってきてくれれば、何かヒントになることをもしかしたら言えるかもしれません。余談ですが僕は録音ボタンをいちいち押すのが面倒なので自分の練習は最初から最後まで、独り言から休憩中のオナラまで録っています。後で聴き返すと、「あれ、この曲もっとよく弾けたはずなのに…なんでこんなに酷いんだろう?」と思うこともしばしばです。俯瞰で見るッてのはそーゆう幻想から”目を覚ます”作業だと思っています。

当たり前ですが、音程がズレている時は音感トレーニング、リズムがブレる時はメトロノームを使ったトレーニング、注意散漫になるなら目覚ましのアラームを鳴らしたままギターの練習をするなど、地道なこともやっていかないと根本的な改善はしません。僕は特にリズム感が鈍いのでメトロノーム練習は必須です。姿勢も大きく影響しますので、悪い姿勢のまま弾かないように。稀にチューニングもしていない方も見かけますが、せめてそこは徹底してください…。

ルーティンを作ろう

ルーティンを作ると練習が習慣化しやすいです。朝起きたら顔を洗って歯を磨くように、毎回やることを決めてそれを1つ1つこなしてウォーミングアップをするのも効果的だと思います。何をルーティンにすれば良いか分からなければ、ネタならあるのでレッスンで聞いてもらえれば良いですし、まぁ、ルーティンを作ったとて短期間で成果が出るようなものではありませんから、急いだり焦ったり精神衛生的によくないことは考えず、長い時間熟成させるつもりで取り組んでみると良いです。

技術的な上手さと音楽的な巧さ

1曲をある程度やっていれば、技術的にこなすことはそんなにハードルが高くないのですが、音楽的な巧妙さは全く別の鍛錬が必要であることもこの機会に是非知っていただきたい。例えば大阪の街を歩けばそこいらで路上ライブをしている若者がいますが、みんなすごく上手ですよね。でも別に、なんていうか、心には響かないです。足を止めるのは、演者さんが珍しい楽器を持っている時か、進路を妨げられた時くらいだと思います。音楽的な巧妙さは、「口うるさいもう一人の自分」が入れたツッコミをどれだけ克服し、それを人前でどれだけ発揮できるかというハードルを越えて初めて滲み出てくるのだと思います。

その演奏が”自分自身”の鏡になった時、人の心を打つかもしれません。だからいつでも自分をさらけ出せる人は、人間的にも音楽的にも強いし魅力的なのです。

 

僕もまだその道の半ば。こればっかりは生涯修行の身と言わざるを得ません。

 

Midville’s
中村

音楽講師 / ビートメイカー

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