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変な会社が会いにきてくれた話

ギター講師の中村です。

このところまた妙な営業電話が多い。先日かかってきた業者は、特に変だった。なんというか、明らかにマトモな会社じゃないのに、ちっとも巧妙じゃなくて、何しに来たん?みたいな。変人の僕をして変な奴と呼ばれることは決して名誉ではないから、どうか改めた方が良いと思う。いや、やっぱ別に改めなくても良いわ…もう関係ないし。

ある朝歯医者の治療中に知らない番号から電話が鳴った。

 

「ミッドヴィルズですー。」
「突然のお電話失礼します。私、{会社名}の{個人名A}と申しますが、音楽教室のミッドヴィルズさんですか?」

 

電話の相手はとても元気な方だった。会社名はなんて言ったのかよく聞き取れなかったので3-4回聞き直したが音質が悪くて結局分からなかった。まぁ、悪い感じはせず。話してみると彼は僕に勝るとも劣らないゲラで、僕がそんなに面白い人間なのかと勘違いするくらい終始笑っていた。ただ歯の治療の途中であんまり話せないのに強引に引き留めてくる感じとか、ヤバそうだなと思ったけど。

用件は端的に言うと「マーケティングのお手伝いをさせて下さい!」とのこと。あぁ、やっぱ”そっち系”か (まだ決まったワケじゃないけど)。「中村さんのような素晴らしい教室を、もっと世の中に広めたいんです!」とか何とか言ってたっけな。そうそう、Midville’sッて素晴らしいよね僕もそう思うありがとう。でも驚いたな、マーケティングの専門家も、自分らのお客は電話営業でとるんだ。僕の教室もそうやって広めてくれるのかな。マーケティングッて一体何かね。

「マーケティングのことは素人なので、詳しく教えてもらっていいですか?」と聞いても「弊社のクライアントさんにはスクールが多くてですね…」と少し違う返事が返ってくる。「私、お酒が好きなんです!」ッて言ってる若い子に、ワインなのか焼酎なのか聞いてるだけなのに「週に2-3回は飲みます!」ッて言われてるような気分…。まぁ、たまにこの手の簡単な質問にうまく答えられない人はいる。緊張してるのかな。とりあえず埒が明かないので一旦切って折り返しますと伝えた。

 

 

1つとしてマトモな電話営業にかかったことがないのも事実だけど、僕は僕で電話営業に対しての悪い先入観が強すぎてよろしくない。折り返すか迷ったけど、自分にないマーケティングの知識だけでも引き出せたらプラスになるかもしれないという知的好奇心と、ヤバい会社だったらネタになるなという非日常的好奇心が半々 (事実上0:10)だったので、とりあえず電話することにした。

 

「実は弊社営業担当が、ちょうど今日関西に出張しておりまして。直接お会いできたらと思うのですが今日のご予定はいかがでしょうか。」
「急ですね。大丈夫です。夜n時に{場所}のスタバ来てください。」

 

こっちの都合で結構ヘンピなところに呼び出してしまったのだけど、即答で行きますと言ってくれるフットワークの軽さは、なかなかすごいと思った。アポが取れたところで電話を切った。

しばらくすると別の番号からまた電話。「私、{個人名B}と申しまして、先ほどお話した者の上司です。」と、女性からだった。彼女は「中村さんのウェブサイト拝見しましたが、すっごくイケメンですね!ウチの女子社員みんなカッコイイッて言ってます!」と、これまで付き合った女性にすらあんまり言われたことないようなおべんちゃらを5分以上続けた。この会社は基本的に話が長い。週に1回、お世辞で相手を気持ちよくさせる電話サービス始めた方が儲かるんじゃないか?と思うくらい上手に持ち上げてくれた。こんな高いところまで連れてこられたら、落とされた時めっちゃショックやわ。「父親いないクセに。」とか言われたらどうしよ。やめろ、家族はディスるな。ウィルスミスするぞ。それにしても、何のためにわざわざ上司が電話してるんだろうか?

「ほんで、上司の方が何の用です?」
「あ、すみません、{場所}のスタバだと閉まるのが早いので、ガストにしてもいいですか?」
「そこ遠いですよ?ていうか、何時間話すんですか?」
「最低2時間はみてください。」

 

これまで宗教とかネットワークビジネスとかの勧誘されたことあるけど、サシで話す時ッてだいたい長めに時間取られるんですよね。「遠征の利は速戦にあり」ッて言うけど長期戦がお好みのようで。

上司がわざわざ電話するような内容か?お世辞と用件も割に合ってないし。

実は家を出る前からここがヤバい会社であることが分かっていた。かかってきた電話番号 を全てネットで検索したら、なかなかこっ酷く書かれてあった。あるサイトでは「この業者はトラブルが多いから注意して下さい。」という紹介もされていた。僕はどんな勧誘でも、基本的に時間さえあれば話だけは聞く。それにもちゃんと理由があるんだけど、それは後で書く。

仕事が終わってガストに着くと、すぐに営業の方と名刺交換をした。会社名が最初に電話で聞いたものと全然違った。「どういうことですか?」と聞くと「最初に申し上げたのは弊社マーケティング部門の部署名です。」とのこと。全くもって意味がわからないけど、僕の知らない常識だということにしておこう。

着席して早々に「どこまで聞いてますか?」と言うので、率直に「サービスについては何も聞いてません。」と答えた。電話じゃ「教室を広めるお手伝いをします٩( ‘ω’ )و」とは言っていたものの、肝心のマーケティングのことなんかヘラヘラして何にも答えてくれなかったしなぁ。

 

・・・

 

変な会社はいつだってこっちが想定した通りに変な人間の集まりだ。でも直接会った営業の方は割と丁寧に説明してくれ、実質1時間くらいで一通り話が終わった。結論から言うと、初期費用ウン十万円+月数万円でWEBサイト作成&SEO施策の契約をしてくれということだった。検索の上位に載せることで集客につながると。ただし7年契約ですと言われた。解約できるのは、僕が40歳の時。犬で言うと6歳。この手の業種ではよくあるレギュレーションなのでしょうか。そんなに良いものなの?SEOツールッて?よく知らないんだけど。

ちなみに言うとWEBサイトは外部依存したくない。新しくなったMidville’sのサイトもテンプレート課金して自分で作った。マメに更新をしたいのでアウトソースでは足が遅くなるし、なんやかんやHTMLやCSS、JavaScript (というかjQuery)であーでもねぇこーでもねぇとやっている時間は好きだ。ちなみにこの会社さんのWEBサイトは一切僕の好みではなく、依頼したいとは思わなかった。ちょっと詐欺集団が好みそうな感じのLP (ランディングページ)ッぽいデザイン感だったので。

まぁ、それでもやっぱり好奇心がまさって話だけでも聞こうと思い、ひとまずいくつか質問した。

「担当したクライアントさんの実績ッて、見れたりしますか?」と尋ねるとあるパーソナルジムのサイトを見せてくれた。1つだけ。

続けて「集客と契約がどれだけ増えたか、定量データが欲しいです。」と聞くと、「それは見せられない。」と言われた。どうやらサイトのアクセス数が増えても契約に繋がった回数まではカウントしないらしい。そんなダイエット食品みたいなことあります?「※個人の感想であり、成果を保証するものではありません。」みたいな?僕がこの会社の営業マンなら集計するけど。

「クライアント同士の繋がりはありますか?」と聞いてみた。どうやらスクール関係に特化している (らしい)し、僕は似たような事業者の知り合いが欲しい。「事業者同士は繋がりませんよ。商売敵ですから。」いや、それもそうなんだが、”同業者だから競い合う”という定義がじゃぁ仮に正しいとして、”だからいがみ合う”というのは僕の商倫理観と全く合致しない。なんか古い価値観ッて感じ。

他にも色々質問したけど、結局、金額とサービスが明らかに噛み合ってないことが分かっただけだった。でもこの営業さんは悪くないさ。上に言われてこんなトコまでノコノコ来てるだけなんだから。

そりゃもちろん「大阪 ギターレッスン」で検索かけて上位にリストされたら箔がついた感じあるしそのノウハウが手に入るなら数万くらい支払いたいところだけど、「成果が出るかは不明!金は取るけど責任はとりません!」ッていう営業を理解してくれるクライアントはいないよ。まず7年後も同じSEO対策でいけると思ってるのだろうか。そうだとしたらめちゃくちゃ脳みそ可愛いな。

そもそもねぇ、僕みたいな一人親方で超絶属人的な事業、稼ぎに上限があることくらいは足し算できたら誰でも理解できるわなぁ。そこに1案件ウン十万の飛び込み営業かけるなんて結構ブッ飛んでると思うんだが。手当たり次第に出たとこ勝負!みたいな、粗野で気骨あるスタイルが営業の美学みたいになりがちなのは分かるが、正直言って敗者の戦法だと思う。攻めたらいけない城くらいちゃんと見極めないと。営業だろあんた。ヤバいヤバい…このままじゃ契約しちゃいそうだよぉぉお…みたいなスリルすら味わわせてくれない。全くもって巧妙じゃない。数年前ネズミ講の連中に囲まれた時の方がよっぽど面白かったわ。

断ったら、何度もゴリ押しされた。それも断ったら「分かりました!値段下げて5年契約にします!」とハリキリ出した。いや、おたく何も分かってないね。契約する気がない相手に安い値段を迂闊に言わない方が良い。僕も営業 (小売だけど)だったから分かる。そのカードはもっと瀬戸際で出すやつだ。彼女にも直接そう忠告したが、残念ながら聞く耳持たず、電卓を叩き続けてこう言った。「これほぼ原価です。どうですか!?」と提示された。うわぁい、ヤッタァ、原価教えてもらっちゃったぁ!じゃないのよ…。

「いや、ないっすね。」

話はこれで終わり。営業の方は、電話だけ持ってお手洗いに駆け込んだ。今頃「すみません、契約取れませんでした。」と謝っているのかな。10分くらいしてから明らかに不機嫌な顔でトイレから出てきた。「ウンコいっぱい出ました?」くらいの冗談言えば少しは和んだのかもしれないけど、下手に刺激しない方が良いかなと思って黙って様子を見ていた。営業の方はイライラしながら荷物を片付けて「行きましょう。」と言って、とっととお店を出て行った。契約が取れなくて悪態ですか、まぁ良いでしょう、ウンコだけに水に流してあげますよ。

お察しの通り、僕は最初から彼らを相当警戒して、疑っていた。

相手にしなくても良かったのだけど、怪しい会社の情報は怪しい会社から採るに限る。情報ッてナマモノであり、生身の人間から採取しないと意味がない。僕はこれを「非日常的好奇心」とか言って茶化してはいるけれども、怪しいからと言って退けてしまうことが清く正しい人生ではないと思うし、本質に触れる機会が失うことにもなる。残念だけどいざとなったら法律も情報も知識もルールも”知っている者”だけにしか味方しない。まぁ、もちろんこんな生き方はオススメしないけど。

是非社訓に取り入れてくれ。「攻めてはいけない城があり、従ってはいけない命令がある。」それか100万円で社歌作ってあげる。おおさっかクンダリま〜で行ったけど〜♪契約取れずにとんぼ返り〜♪嗚呼〜、全国の〜、個人事業主様〜♪お時間〜、取らせて〜、申し訳ございませんでした〜♪これ毎日歌え。

 

Midville’s
中村

音楽講師 / ビートメイカー

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